研究実績の概要 |
認知機能の加齢変化に個人差が生じる.本研究は,その個人差をもたらす要因として,年齢段階に応じた生活環境に着目した。これまでの研究成果を3つに分けて説明する. 1つめは,後期高齢者を対象にアンケート調査を実施した結果である.1,179名に調査票を郵送し,有効回答数は444名(有効応諾率37.6%)であった.回答者の基本属性は,男性216名,女性228名,年齢は77歳から91歳(平均年齢83.5歳,標準偏差4.2)であった.自由記述の内容分析の結果,10代の時一生懸命した活動は「家事,手伝い」「勉強」「委員」「読書」「スポーツ,運動」「実用,習い事」「和裁,洋裁」等の12の活動に分類された.20代では「仕事」「家事,子育て」「学業」「実用」「余暇活動」の5つに分類された.高等教育を受けていない者は,10代に「家事,手伝い」に従事した割合が多く,20代に「余暇活動」に従事した割合が少なかった.一方,高等教育を受けた者では,10代に「読み書き」や「対人関係」にエフォートを割いていた人ほど,高齢期の認知機能が高いことが示された.若年期の生活環境を、教育歴以外の観点から評価することの有用性が示された. 2つめは,教育歴,仕事経験,余暇活動を評価した既存データを用いて,高齢期の認知機能との包括的な関連を分析した.人生初期,中期の生活環境に関わらず,高齢期に多様な余暇活動を行っている人の方が認知機能が高い傾向が示された.一方で,人生初期,中期の生活環境が高齢期の余暇活動を媒介して高齢期の認知機能に影響する間接的影響も示された. 3つめは,研究成果の広報活動である.本研究の研究成果とともにコロナウィルス禍の暮らしに役立つ老年学の知見を掲載したニュースレターを3回発行し,調査協力者へ送付した.また,本ニュースレターや研究実績をホームページへ掲載した.
|