本研究では、(1)新しいタイプの抑うつ症候群(以降、新抑うつとする)の重症度概念を検討し、(2)それを測定する尺度を作成し、(3)現場における利用可能性を検討することを目的とする。これら3つの目的のうち,1つ目及び2つ目の目的は2019年度に達成された。そのため,2021年度は2020年度に引き続き3つ目の目的に取り組んだ。 2021年度は2つの課題を設定した。1つ目の課題は作成した尺度の予測的妥当性を検討するための縦断調査を継続することである。これについては、内定の決まっている大学4年生を対象として2020年3月に実施した第1回調査から継続し,入社1年後にあたる2021年4月に第5回(n=114),入社から約2年が経過した2022年3月に第6回(n=133)を実施した。加えて上記縦断調査(第5回)の参加者を対象にWEBインタビュー調査も実施した。この調査では,インタビュー調査への参加依頼に応諾した者の中から,対人過敏傾向と自己優先志向が高く開発した重症度尺度(DSOOD)で不調を示していること,もしくは対人過敏傾向と自己優先志向が高いにも関わらずDSOODで不調を示していないことを条件に参加者を選定した。これは縦断調査で得られた量的な結果について,実際の認知行動的特徴と職場環境が新抑うつの発症に影響しているかどうか,すなわち理論や尺度の妥当性を質的に検討する目的で行った。最終的に条件に一致する5名に対してそれぞれ約1時間の個別WEBインタビューを実施した。 2つ目の課題は臨床群を対象に面接調査を実施し基準関連妥当性を検討することである。これについては臨床面接の中に作成した尺度を含める形で継続してデータを収集し,最終的に74例のデータを得ることができた。
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