研究課題/領域番号 |
19K14396
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研究機関 | 至学館大学 |
研究代表者 |
池田 琴恵 至学館大学, 健康科学部, 准教授 (70734169)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | エンパワーメント / ワークライフバランス / 尺度構成 |
研究実績の概要 |
2023年度は2022年度に明らかとなったエンパワーメント概念における実践的批判に基づき,エンパワーメントの過程と状態に関する仮説を生成するための質的研究を行った。 予備調査として,大学生を対象とした「不公平・不平等状況」における状況認知,対処行動,行動の理由という3点について質問紙調査を実施した。その結果として,まず不公平・不平等状況の認知については50%が感じたことがあるが,50%は感じたことがないことが示された。これは問題の認知・認識についての個人差があることを示唆しているものと考えられる。不平等だと感じた出来事については,「指導者の選好」「評価への影響」「罰」など,特に部活動指導者や教師との出来事が中心に抽出された。本調査は対象者が大学生であったため,指導する立場-指導を受ける立場というパワーバランスが中心に認識されやすいことが影響していると考えられる。次に,不公平・不平等状況に対する対処行動として,「何もしない」「従う」「抗議する」「他者に相談する」など9つのカテゴリ(14概念)が生成されたが,最も多いのは「何もしない」であった。その理由として「無力感」「報復の不安」「悪化を防ぐ」「上下関係」など16のカテゴリ(23概念)をした。不公平・不平等状況が生じる背景となるパワーバランスや他者・集団の状況を理解した上で,問題の悪化を避けるための手立てとして「何もしない」ことを選択していることを示すことができた。当該研究結果は,日本コミュニティ心理学会第26回大会にて発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
産休や新型コロナ拡大に対応する業務等で研究活動を行う時間が十分に確保できなかった。また,文献調査の過程で,エンパワーメント概念の定義と測定の課題が明らかとなったことで,調査方法や内容の見直しを行い,研究計画の練り直しを行ったため。
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今後の研究の推進方策 |
本年度はエンパワーメント概念の捉えなおしに伴い,自由記述法を用いた尺度項目の抽出を目指した。しかし,2020年の先行研究で指摘された通り,エンパワーメントに該当する認知・思考・行動をとる対象者は非常に限られた数であることが明らかになった。そのため,調査対象者の範囲および対象数を拡大し,より詳細に事例・事象の収集をオンライン調査にて行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初予定していたオンライン調査が遅れており,大幅な支出がなかったため,次年度使用額が生じた。 次年度は質問紙の項目抽出のための社会人対象の質的調査をオンライン調査会社を通じて行い,さらに抽出された項目をもとに量的調査を同様に行うために資金を使用する予定である。
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