今年度は、大学生を対象に、授業中の動機づけの変動性を抑制する介入研究を行った。そして、その介入を評価するために、あわせて縦断的な調査を実施した。これまでの研究から、動機づけの変動性を抑制するために、4つの要因に着目した。それらは、学習不安、眠気・疲労感、動機づけ調整、熟達目標であった。つまり、学習不安と眠気・疲労感を低下させ、動機づけ調整と熟達目標を促進させることで、動機づけの変動が小さくなると考えられる。 介入は、3回の授業で実施された。介入方法として具体的には、授業の冒頭および終わりに、各要因を低下・促進させるような説明や教示を行った。例えば、学習不安であれば、担当教員は学習に関していつでも相談に乗ることなどを説明し、安心して学習を行ってほしいという旨を伝えた。介入の前後において、オンラインで調査を実施し、動機づけの変動性に加えて4つの要因を測定した。なお、介入はオンデマンド型の5つの授業を対象に実施され、計35名の大学生のデータが得られた。 分析の結果、仮説に反して学習不安は増加し、動機づけ調整は低下した。また、眠気・疲労感と熟達目標については、変化を示さなかった。加えて、介入の前後で動機づけの変動性にも変化は見られなかった。これらの結果は、単なる教示による介入では、動機づけの変動性の抑制は困難であることを示している。また、今回はオンデマンド型の授業であったため、研究対象者が当該の教示の動画部分をきちんと見ていなかった可能性も考えられる。授業形態を考慮した効果的な介入方法について、今後の慎重な検討が必要である。
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