研究実績の概要 |
本年度は,これまでに行ってきた「手がかり語から連想される語の数が誤検索効果に及ぼす影響」について,更に遅延フィードバック(FB)条件下での影響を検討した。従来,単語対を用いた誤検索効果は遅延FBの場合成績が低下すると言われてきた(e.g., Kornell, 2014)が,これまで行ってきた研究(e.g., Tanaka et al., 2019)ではそのような影響は見られなかった。本研究では,「手がかり語から連想される語数」と「遅延FB」の両方が誤検索効果に及ぼす影響について検討した。 昨年度までの研究同様,連想され得る単語の多い手がかり単語と少ない手がかり単語99語について,それぞれ意味的に弱い関連性のあるターゲット単語を1つずつ設定し,これらをペアにして学習させた。このうち3分の1の単語対は事前のテストとして手がかり語からターゲット単語を推測させ,直後に正答(設定されたターゲット単語)を提示する直後FB条件,3分の1は同様の事前テストの後,20分程度の遅延の後に正答を提示する直後FB条件,残りはテストを実施せずに手がかり単語と正しいターゲット単語を読んで覚える統制条件に割り当てた。 手がかり単語から正しいターゲット単語を想起させる最終的な想起課題の結果,直後FB条件が最も成績が良く,続いて遅延FB条件,統制条件の順に成績が低下した。またテストを実施したか否かにかかわらず,連想され得る単語が少ない手がかり単語の方が,連想され得る単語の多い手がかり単語のペアより良く想起された。 今回の研究においても,連想され得る単語が多い手がかり単語のペアは想起成績が低かった。手がかり単語と関連する語が多いことが混乱を生じ,記憶においてネガティブな影響を及ぼす可能性が考えられる。一方遅延FBの影響についてはこれまでの結果と一致しなかった。この点については今後詳細な分析を行っていく予定である。
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