研究実績の概要 |
本研究では,幼児期後期に形成されると考えられる心的数直線の発達過程とその操作の実態を明らかにすることが目的であった。昨年度より育児休業を取得していたため,本年度は年度途中より研究活動が再開した。そのため,改めて先行研究のレビューをするとともに課題の内容について精査した。さらに3歳児から5歳児の数量活動について観察を行い実態把握を行った。 これまでの研究で,数直線課題を答える際に心的な数量表象を利用しているとする立場と(Booth & Siegler, 2006; Dehaene, Izard, Spelke, & Pica, 2008; Siegler & Opfer, 2003など),比率判断が必要である課題で数量表象の発達を捉える課題ではないとする立場(Barth & Paladino, 2011; Cohen & Sarnecka, 2014など)の2つの見解があったが,Yuan, Mix & Smith (2021)が数直線課題の刺激の提示方法を改善した結果,幼児期の4歳から6歳児に関しては数量表象を使用していることが明らかになった。よって本研究の目的でもある幼児期の心的数直線の発達を支持する結果となった。課題についてはYuan et al.(2021)が使用していた範囲や量の表示の仕方も取り入れて検討した。 また,こども園での観察により,数量活動については年齢別のクラスにより観察できる数量活動が変化することが明らかになった。具体的には,いずれの学年も計数する活動はよく見られたが,足し算や引き算の計算については4歳児,5歳児クラスに限られ,数量の比較についても年長児に多く見られるという結果となった。また大きな数(100や1000など)については漠然と大きな数という認識で曖昧であるが,長い,大きいといったことを大きな数を使用して表そうとする姿が見られた。
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