研究課題/領域番号 |
19K14412
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
平松 洋一 千葉大学, 子どものこころの発達教育研究センター, 特任研究員 (00802589)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 恥の記憶 / 外的恥 / 内的恥 / おもいやり / コンパッション・フォーカスト・セラピー |
研究実績の概要 |
全体の研究の目的は,まず「恥の記憶」によって生じる「恥の感情」を測定するための心理評価尺度の日本語版を作成する。次いで、うつ病の治療を困難にする「慈悲への恐れ」の生成要因として「恥の記憶」がどのように働いているのかについての調査研究を行い、「慈悲への恐れ」と「恥の記憶」の関連性を検討する。その上で「恥の記憶」及び「慈悲への恐れ」を緩和する「思いやりの記憶」の存在を示し、最後に、得られた知見を新たに加えた集団CFTプログラムを実施し、「慈悲への恐れ」とうつ症状の軽減効果を検証することである。 当初の計画の通り,Other As Shamer scale(OAS)日本語版,及びExternal and Internal Sshame Scale(EISS)日本語版の作成を行った。OAS日本語版作成については,4月5日にBMC research Notesから出版された(Development of the Japanese version of the Other As Shamer Scale using item response theory)。 一方EISSに関しては,OAS日本語版を用いて並存的妥当性を検討する必要があったことから,2019年度に日本語訳を終了し,調査は2020年度に実施することとなった。 これまで、日本において場面に依存しない特性としての恥の感情の強さを測定する尺度は非常に少なかった。これらの尺度の日本語版が完成することによって,Compassion focased Therapy において注目される恥の感情の程度を,日本においても測定することが可能となるため,それ以降の調査研究,および介入研究における指標を提供することとなり,有意義である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初EISS日本語版も2019年度に標準化される予定であったが,2020年度に持ち越されることとなった。ただし,すでに翻訳自体は完成しており、2020年度に実施予定であったインタヴュー調査と並行して実施することが可能であり、研究計画の大きな後れにはつながらない見込みである。 しかしながら、COVID-19感染拡大の影響で,2020年度に行う予定であるEISS標準化のための大学生を対象とした質問紙調査,及び,当初の計画に含まれる個人インタヴュー調査の募集活動が行えなくなる可能性が生じている。その場合は,計画が半年~1年遅れる可能性があるだろう。
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今後の研究の推進方策 |
EISS日本語版の標準化を行うため,2020年度前期に複数の大学の大学生200名以上を対象とした質問紙調査を実施する。 大学生を対象としていたため、コロナウィルス感染拡大の影響が落ち着き、大学の講義が再開した後に、調査を実施することとする。 また,日本語版Shame memory interviewを作成し,うつ病者15名を対象として,恥の記憶の内容を聴取するための半構造化面接を実施する。結果を分析することによって,恥の感情を促進する恥の記憶の構成要素,また,慈悲への恐れを促進する構成要素を明らかにする。 精神科外来クリニックに来院するうつ病者を対象とすることから、コロナウィルス感染拡大の影響が落ち着いてから後、実施することとする。 2021年度以降は、インタヴュー調査の知見を心理教育に取り入れたうえで、コンパッションフォーカストグループセラピーをうつ病者20名に実施し、恥の感情の変化を測定する。
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次年度使用額が生じた理由 |
インタヴューやミーティングなどで持ち出し用として使用していたPCが故障したために,当初2021年度に購入予定で予算を立てていたPC代金20万円を前倒し申請した。2月にPCの購入を申し込んだが,コロナウィルス拡散の影響で年度内に納品されなかった。そのため,残金は次年度に持ち越した上で,PC購入費用に充てる予定である。
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