研究課題/領域番号 |
19K14413
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研究機関 | 大正大学 |
研究代表者 |
石川 亮太郎 大正大学, 心理社会学部, 専任講師 (80625608)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 社交不安 / 加害感 / 認知理論 / 対人恐怖症 |
研究実績の概要 |
社交不安症とは,他者によって注目される場面で強い不安や恐怖を感じ,その状況を回避するようになり,やがて日常生活に支障をきたす疾患である。本年度の研究では,加害感の強い社交不安症(他者に迷惑をかけることを恐れるタイプの社交不安症)と関連する認知的要因について検証するための調査をおこなった。 まず,社交不安傾向と被嫌悪回避傾向(対人関係における苦手意識と関連する心理特性; 河野・羽成・伊藤,2014)との関連性について検証した。方法として,大学生98名(mean age=19.68)を対象に,Googleフォームを用いた質問紙調査をおこなった。そして,全般型社交不安を統制変数としたうえで,加害型社交不安と非嫌悪回避行動,およびパフォーマンス型と非嫌悪回避行動との偏相関を検証した。その結果,加害型社交不安は非嫌悪回避傾向と有意に偏相関していた。また,加害恐怖型社交不安は,パフォーマンス型社交不安よりも,非嫌悪嫌悪回避行動との偏相関が僅かに強いことが示された。 上記の研究に加えて,社交不安症を悪化させる認知的要因としてHoffman(2007)により指摘されている「理想と現実の不一致」の程度を測定する尺度(自己不一致尺度; Self-Discrepancies Scale; Philippot et al., 2018)の翻訳をおこなった。当該尺度の妥当性を検証するための予備調査を大学生52名(age=20.25, SD=1.12)におこなった。その結果,仮説通り,自己不一尺度は社交不安症と有意に相関していた。今後も引き続き,当該尺度の妥当性を検証しつつ,加害型社交不安症との関連性を検証する研究をおこなっていく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
Covid-19による緊急事態宣言の影響により,大学生を対象にした実験などが困難になった。しかしながら,研究手法を質問紙調査に切り替えることによって,研究を継続することができた。また,データ数が少ないことから,研究結果を論文として出版できるレベルには至れていない。
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今後の研究の推進方策 |
加害型社交不安とパフォーマンス型社交不安の傾向を測定する社交不安尺度(Iwase et al., 2000)の判別的妥当性を検証するため,社交不安症,他の不安症,うつ病の診断をもつ臨床患者を対象にした質問紙調査をおこなう。同時に,社交不安と予期スティグマとの関連性や,社交不安と未来結果熟慮思考との関連性についても検討をおこなっていく。さらに,加害型とパフォーマンス型の行動的特徴(安全行動の内容)の違いを明確にするため,それぞれの安全行動の傾向を測定する日本語版の心理尺度を作成していく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
COVID-19による緊急事態宣言等の影響により,国際学会への参加を見合わせたことによって,次年度使用額が生じた。また,臨床患者を対象にした研究が昨年度実施できなかったため,次年度使用額が生じた。 次年度使用額は,主に昨年度実施できなかった,臨床患者を対象にした調査のための謝金および人件費に使用する。また,社交不安症と安全行動の研究で使用する新たな心理尺度作成に要する翻訳費,謝金,および統計解析ソフトの購入などに使用する予定である。
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