研究課題/領域番号 |
19K14413
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研究機関 | 大正大学 |
研究代表者 |
石川 亮太郎 大正大学, 心理社会学部, 専任講師 (80625608)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 加害型対人恐怖症 / 認知行動理論 / 社交不安症 |
研究実績の概要 |
対人恐怖症(Taijin-Kyofusho)は、アジア圏に特有の社交不安症とされており、主に緊張型対人恐怖症と加害型対人恐怖症の2つに大別される。加害型の対人恐怖症は、自らの体臭、視線、引きつった表情、身体的欠陥等が、社会的に不適切であり、他者から不快に思われてしまうことを過度に恐れる症状である。この加害型対人恐怖症は、社交不安症だけでなく、強迫症や妄想性障害といった症状との関連性が指摘されている。 当該年度において、上記で説明した加害型対人恐怖症の重症度を測定できる新たな心理尺度(加害型対人恐怖症目録)の開発をおこなった。対人恐怖症の重症度を測定する心理尺度については、既に標準化されているものが複数存在しているが、本研究にて開発した心理尺度には、次のような新規性がある。a) 加害型対人恐怖症にみられる典型的な4つのタイプの症状(自己臭恐怖、視線恐怖、表情恐怖、醜貌恐怖)を測定できる。b)加害型対人恐怖症における認知的症状を確信度、心的占有度、苦痛度の3つの視点から測定することができる。c)加害型対人恐怖症における行動的症状(安全行動や回避)について測定できるといった特徴がある。当該年度では、開発した加害型対人恐怖症目録を用いて、大学生を対象にした予備調査をおこなった。その結果、加害型対人恐怖症目録は、既存の対人恐怖症尺度(Kleinknecht et al, 1997)や全般重症度と中程度に相関することを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当該年度では、大学生を対象にした予備調査をおこなうことはできたが、本調査の実施を達成することができなかった。主な理由としては、今回開発した加害型対人恐怖目録の内容について、複数の専門家から助言をもらいながら修正を繰り返し、より内容的妥当性の高い質問項目を目指したため、想定以上の時間と労力が必要となった。本調査の実施については、予備調査の結果をふまえ、研究計画の内容をさらに吟味したうえで実施する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、本研究において作成した加害型対人恐怖症目録を用いて、当該尺度の妥当性と信頼性を検証するための質問紙調査をおこなっていく予定である。調査対象者は対象は18歳-24歳までの青年期(n=2000)であり、主にWEB調査会社に外部委託してデータを収集する。さらに、加害型対人恐怖症における認知的症状の頻度と行動的症状が、それぞれどのように関連して、対人恐怖症の苦痛度を高めているのかを検証する。当該研究の結果に基づいて、加害型対人恐怖症が維持・悪化されるメカニズムを説明する認知行動理論を考察する。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度に質問紙調査を外部委託して実施する予定であったが、調査資料である心理尺度について修正と改訂を繰り返したため、本調査の実施がおくれてしまった。本調査については、次年度に先送りすることになったため、次年度使用額が生じた。
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