研究実績の概要 |
加害型対人恐怖症(Offensive type of Taijin-Kyofu-Sho)は、自らの身体的特徴(例、体臭、視線、表情など)が、他者に不快感を与えてしまうのではという心配と加害感により、対人場面を過度に回避する症状である。加害型対人恐怖をもつ当事者は、その恐怖を一時的に軽減するための安全行動を過度におこなってしまう(例: 体臭を消すために消臭スプレーを使用したり、自分の体臭を繰り返し確認したりする行動がやめられない)。 本年度の研究では、加害型対人恐怖症状の4タイプ(自己臭恐怖・自己視線恐怖・自己表情恐怖・醜貌恐怖)の認知的症状・行動的症状の評価が可能な自記式の心理尺度を開発し、その妥当性と信頼性(内的整合性)を検証した。学生サンプル(n=811, Mean age = 20, SD=1.270)を対象にした調査の結果、著者らによって作成された加害型対人恐怖症尺度は28項目、4因子構造(自己臭・自己視線・自己表情・醜貌恐怖)であり、十分な内的整合性(α=.870 ~ .927)を有していることが確認された。また、仮説通り、加害型対人恐怖症尺度は、既存の対人恐怖症尺度(r= .773, p < .001)や社交不安症尺度(r= .568, p < .001)と有意に相関しており、当該尺度の構成概念妥当性が確認された。本研究によって作成された加害型対人恐怖尺度は、加害型対人恐怖の症状に苦しむ当事者のアセスメントやその治療効果の評定、さらには、加害型対人恐怖に関する心理学的調査や実験研究等において幅広く使用されていくと考えらえる。
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