研究実績の概要 |
本申請研究の目的は,アルツハイマー型認知症及び軽度認知障害患者の認知障害パターンと安静時脳活動ネットワークにおけるネットワーク障害との関連を明らかとすることである。具体的には,認知症疾患医療センターを受診した認知症患者を対象に認知機能の評価と磁気共鳴画像装置を用いた安静時脳活動データの取得を行い,安静時ネットワーク間の機能的結合性指標の違いを軽度認知障害とアルツハイマー型認知症において検討することである。 今年度は,昨年に引き続き認知症患者の認知機能障害の様相を簡易神経心理テストバッテリーによって評価し,認知機能障害パターンと各ネットワーク内またはネットワーク間の機能的結合性の相違を比較するためのデータを収集することを目的とし研究を遂行した。簡易神経心理テストバッテリーは全般性認知機能, 注意機能, 処理速度, 視空間構成機能, 遂行機能の評価を目的とし, Mini-Mental State Examination, 数唱(WAIS-III), 符号(WAIS-III), 立方体模写課題, 時計描画検査, Frontal Assessment Battery, Trail Making Testを使用した。アルツハイマー型認知症10名,軽度認知障害患者10名を分析対象とし,独立成分分析を用いて安静時脳活動ネットワークのDefault mode network, Salience network, fronto-parietal networkを含む8つのネットワークを抽出した。次年度は,さらに健常データの収集を予定しており, これらのネットワーク内またはネットワーク間の特定の領域が健常群と比較して, アルツハイマー型認知症および軽度認知障害がどの程度影響を受けているのか, 認知様相との関連と共に検討を行う。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
認知症患者30名程度(アルツハイマー型認知症15名,軽度認知障害15名)のデータ収集を予定していたが,新型コロナウィルス感染症により受診患者数が減少しており,収集データが目標人数に達しておらず、データの蓄積を続けている段階である。そのため,安静時ネットワークの機能的結合性と認知機能障害との関連性の検討がやや遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
認知症及び軽度認知障害患者の認知機能の評価を継続し,それと同時に安静時脳活動データの取得を行い,脳内ネットワークの機能的結合性の変化と認知障害の関連性について解析を遂行する予定である。それと並行し,健常群のデータ収集も予定している。安静時脳活動データはCONN toolboxを用いて解析を行い,Triple network modelの'core neurocognitive network’を構成するSalience network, Central executive network, Default mode networkそれぞれの機能的結合性の変化と認知症患者の認知様相との関連を検討する予定である。
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