研究実績の概要 |
令和2年度に実施した研究の成果として、第一点は、36項目から成る新規尺度の完成。第二点は、その妥当性と信頼性を検証する方法を定めたプロトコルの登録の準備がある。 第一点では、家族にネガティブおよびポジティブ感情を引き起こす介護の側面ごとに各感情(Anger-Frustration, Surprise-Confusion, Sadness-Fatigue, Fear-Anxiety, Guilt-Shame)を5段階で測定する72項目の質問から36項目を選択、修正した。その意義は、新規尺度の理論的背景である質的研究の系統的レビューが統合失調症を対象としていたため、他の重症精神疾患(統合失調感情障害/躁うつ病/慢性うつ病/強迫症/神経性やせ症)にも適用を広げることにあった。適用疾患の拡大は、新規尺度の汎用性を高める点で重要である。 第二点では、研究プロトコルを英文化し、国際学術雑誌への投稿・登録を準備した。その意義は、英文化の過程を通して、データ収集および統計解析の方法を見直し、研究の質を高めることにあった。検証する尺度特性(structural validity, internal consistency, test-retest reliability, measurement error, construct validityおよびcriterion validity)について、データ収集前に研究プロトコルを登録・公開することは解析結果の信頼性を高める点で重要である。加えて、バックトランスレーションを行い、新規尺度の英語版を作成した。その意義は、今後、日本人以外の文化的背景をもつ集団への新規尺度の異文化間妥当性を検証可能とすることである。
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