研究期間全体を通じて実施した研究の成果は、Care-Related Emotion Assessment Measure(以下、CREAM)の完成である。CREAMは、36項目から成る自記式質問紙で、家族のエンパワメント状態を感情の強さで測定できる。 2021年度までにアンケート調査を行い、統合失調症を始めとする重度精神障害者の家族611名のデータを収集した。そのデータを用い、2022年度、以下のようにCREAMの尺度特性を明らかにした。611名のデータを2群にランダム分割し、1群に対して因子構造と内的一貫性を検討した。探索的因子分析とクロンバックα係数の算出を行い、項目数を72項目から36項目まで削減してCREAMを完成させた。もう1群に対しては、因子構造と再テスト信頼性、収束的・弁別的妥当性を検討した。CREAMに加え、Profile of Mood States(気分状態)、Zarit介護負担尺度(介護負担)およびsense of coherence尺度 13項目版(首尾一貫感覚)などの比較尺度を測定し、確証的因子分析、ピアソンの相関係数の算出を行った。また、2週間後の再テストとして100名にCREAMを測定し、級内相関係数を算出した。因子構造を含む結果は、研究成果報告書に記載する。 さらに、収集したデータのうち兄弟姉妹237名を対象として、精神病性障害患者の生活の支障と兄弟姉妹の感情状態に、介護負担および首尾一貫感覚がどのように介在して影響をするかを共分散構造分析で検討し、介護負担が兄弟姉妹のネガティブ感情のみならず、ポジティブ感情を強める効果を世界で初めて示した成果を国際誌に発表した。
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