研究課題/領域番号 |
19K14421
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研究機関 | 名古屋市立大学 |
研究代表者 |
井野 敬子 名古屋市立大学, 医薬学総合研究院(医学), 助教 (10727118)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 発達障害 / 不安症 / 心理療法 / アクセプタンス&コミットメント・セラピー / 認知行動療法 |
研究実績の概要 |
難治性の不安症患者には発達障害傾向を持つ者が多いが、このような患者の治療予後について知見は得られていない。本研究では、まず発達障害傾向がアクセプタンス&コミットメント・セラピー(ACT)を行った際の予後予測因子となるかどうかを検討する。さらに発達障害傾向の高いものに対してACT治療後にインタヴューを行い、それをもとに発達障害を背景に持つ不安障害患者に対してその特性にマッチした効果的な修正版プログラムを開発することが本研究の目的である。
現在はリクルートを進め、ACTプログラムを不安症患者に施している。症例数は数例であるために、予後予測因子の中間解析は困難であるが、来年度以降はまず効果について検証したい。発達障害傾向が特に高い患者を対象にACT治療後にインタビューし、修正版プログラムの開発に着手した段階である。しかし、ACTプログラムに参加したもののうち、インタビューの対象となる発達障害傾向の高いものはリクルート数より少ない。インタービュー数を確保するために、発達障害の診断が確定している通常外来の不安症患者などもインタビューの対象者とし、十分に情報が得られるようにした。
修正版ACTについてはプログラム全体を変えるのではなく発達障害傾向の特徴によって追加するモジュールを作成するのが利便性が高いと現段階は考えているが、臨床的に使いやすく効果的であるためには全体のプログラムを変更することも選択肢として検討している。発達障害を専門とする児童精神科医やACTのエキスパートとディスカッションし、修正プログラムの方向性を決めていく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究の対象となる者が非常に特定されているため、症例数の確保が困難であることが、やや遅れている原因である。本研究ではACTを行なったケースのうち発達障害傾向のある者のみからACTに関するフィードバックを得る予定であったが、それではインタービュー数が確保できず、プログラム修正のための有用かつ十分な情報が集まらない可能性がある。よってインタビューの対象者を広げ、不安症に対する第二世代認知行動療法を受けた患者のうち発達障害傾向のあるもの、心理療法は受けていないが発達障害の診断が確定している通常外来の不安症患者もインタビューの対象者とし、広くフィードバックを得ることに変更した。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、さらにリクルートを進めていく。また発達障害を専門とする児童精神科医やACTのエキスパートとディスカッションし、修正プログラムの方向性を決めていく。
また昨今のCOVID-19感染症のために、診察室に長時間滞在することを余儀なくされる心理療法は、さらにリクルート数が減ることが予想される。また感染症への不安を理由とした脱落も考えられる。そのため本研究はいくつかの変更を余儀なくされる可能性がある。例えば治療期間、治療内容、インタビュー形式、グループ療法を個人療法に変更する、などである。これについて来年度より検討していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナウィルスの影響で参加を予定していた研修会や学会が中止となり次年度に繰越すこととなった。次年度には研究補助の人件費や研究活動に必要な物品の購入、研修会の旅費及び参加費に使用する予定である。
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