研究課題
研究の概要:当院では認知行動療法で効果の得られなかった難治性パニック障害に対して、アプセプタンス&コミットメント・セラピー(Acceptance & Commitment Therapy: ACT)のグループ治療を行い効果が得られつつある。このような難治性の患者には発達障害傾向を持つ者が多いが、このような患者の治療予後について知見は得られていない。よって、本研究ではまず発達障害傾向がACTを行った際の予後予測因子となるかどうかを検討する。さらに発達障害傾向の高いものに対してACT治療後にインタヴューを行い、それをもとに発達特性に適した修正版ACTプログラムの開発を行う。本研究は、発達障害を背景に持つ不安障害患者に対してその特性にマッチした効果的なプログラムを開発することを目的とする。研究実績の概要:現在、数例の難治性のパニック障害患者に対してACT(集団及び個人)を施行し、発達障害傾向の高い者に対してはプログラム内容についてインタビューを行った。プログラムはインタビューの内容を踏まえて、修正を加えつつ治療を施行している。発達障害の特性に合わせた修正点としては、口頭説明を可能な限り簡潔にし視覚化した教材を用いること、こだわりの強さに対しては認知検討を控えて体験的エクササイズで代用すること、成人であっても遊びの要素を加えることをプログラム修正点として加えている。また発達障害尺度のフィードバックは、治療前に積極的に行い心理教育を行った。発達障害の特性と本研究の治療プログラムを施行した際の予後に関しては解析が可能な症例数に満たないが、発達障害傾向の強いものは、前回の第二世代認知行動療法(CBT)の治療については終了直後の悪化、広場恐怖が極端で広範であるなどの特徴が示唆される。
4: 遅れている
本研究はパニック障害の心理療法の予後予測因子を解明するもので、集団心理療法の実施を前提としている。研究は予定より遅れているが、主な理由は新型コロナ感染症のために週1回・1回60分のセッションに来院し続けることの困難であり、リクルートの滞りとセッション中止を余儀なくするケースを認めている。研究開始当初は集団療法を予定していたが、パニック症の患者はその病態ゆえに呼吸器症状・倦怠感などの症状を呈しやすく感染症との鑑別が困難であること、身体症状が感染不安に結びついている者も存在し、グループ療法としての介入は取りやめ個人療法を施行している。集団及び個人療法にて数例の施行を終了し、治療内容についてのインタビューを行った。
感染不安のためにセッションの参加を見合わせる、もしくは中断する参加者がある可能性を認める。次年度が最終年度であるものの、上記のような理由から前向きコホート研究では症例数に満たない可能性があるために、過去に当院にて認知行動療法を受けた不安症患者に対してパニック症の重症度評価尺度・発達障害尺度の関連を見る横断的調査を追加することも検討する。
また今年度まででは論文で発表できるサンプル数に至っていないため、英文校閲などの論文投稿関係の料金支出が少なかった。新型コロナ感染症のために、研修会・学会参加費、旅費などの予定していた経費が未使用に終わっている。次年度は論文の英文校正、投稿費用、参加者へのアンケートの郵送費用と謝金などに研究費を使用予定である。
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