本研究は日米のパーソナリティ障害の相違が、近年米国で活用されているShedler-Westen Assessment Procedures-200(以下SWAP-200)の採点及び評価にどのように反映されるのか、また解釈において何を考慮する必要があるのかなどを比較検討することを目的とするものである。これまでの研究で、SWAP-200に現れる日米のパーソナリティ障害には、いくつかの違いがあり、特に「依存性パーソナリティ障害」(以下、依存性PD)に関しては、日米の臨床家の評価に大きな違いがみられることが見出されてきた。具体的には、米国の依存性PDが妄想性・反社会性・自己愛性・受動攻撃性とは相関がみられないか、見られたとしても弱い正の相関であるのに対して、日本のそれはこれらと弱いないし中程度の負の相関が認められた。また内容的にも米国の依存性PDが主に能力に関する悲観的見方であったのに対し、日本のそれは不安や気力の欠如、自己非難などが見られた。このような違いが現れた要因として、「依存性」の文化的捉え方の違いという文脈から土居健郎氏が提唱する「甘えの構造」の関与が考えられた。本年度は、この知見を前提にSWAP-200のアセスメントに基づいた治療過程について、同じくパーソナリティ障害の治療と研究を行っているコロンビア大学精神分析訓練研究所及びニューヨーク人格障害研究所の研究者と検討を行い、SWAP-200の実践的活用についてまとめた。また、日本語版SWAP-200の活用及びSWAP-200のアセスメントに基づいた実践的治療については、日本精神分析学会第68回大会で発表を行った。
|