研究課題/領域番号 |
19K14427
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
松浦 隆信 日本大学, 文理学部, 准教授 (40632675)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 不安 / 自己受容 / 心理療法 / 動機づけ |
研究実績の概要 |
本研究は、人々が生活の中で感じる不安を解消するために用いられる心理療法の技法がなぜ有効に作用するのか、その根拠を心理学で使われている様々な理論を参照しながら明らかにすることが目的である。 今年度の研究では、先行研究で明らかになっている「不安が生じる背景にはより良く生きたいと思う気持ちが存在すること」に関する知識を伝達することによって、どのような心理的、行動的変化が生じるかを検討した。具体的には大学生に対して、上記内容を伝達するスライド資料を提示し、1か月間、不安を感じた際にその内容を思い起こしてもらいながら生活を送ってもらった。研究の前後では不安感や自己受容の程度を測定する質問紙調査を実施した。また、不安に対する捉え方について自由記述で記載を求めた。その結果、不安感については一か月後にも統計的に有意な軽減効果は見られなかった。その一方で、自己受容の程度は統計的に有意に高まった。自由記述の結果からは、「不安がより良く生きたい気持ちの裏返しである」と聞いただけでは、不安を取り除く根本的な解決にはつながらなかったことが多く記された。 以上の結果から、近年の心理療法で用いられることが多い「不安が生じる背景にはより良く生きたいと思う気持ちが存在する」という知識の伝達は、不安を感じること自体を否定的に捉えなくなる効果が認められた。一方で、実際の不安感の軽減には寄与しないことも明らかとなった。不安を軽減する上では、不安を感じる場面に踏み込むことが必要な点が先行研究で明らかになっている。よって、上記の知識伝達を行い自己受容の気持ちを高めることは、行動に踏み出す勇気や動機づけを高める可能性が考えられる。今後、今年度の研究で得られた左記の仮説を実証するための研究を進める予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は1年目に仮説の設定を行い、2年目から4年目にかけて実証研究を行う予定であった。しかしながら、1つ目の仮説の設定が順調に進んだこと、データ収集の機会が予定より早く得られたことから、1年目で実証研究の1つを行うことができた。一方で、その他の実証研究に向けた仮説が予定していた数よりは設定できていない。以上の理由から、研究全体として遅れは生じておらず、おおむね順調に進捗していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
1年目の研究結果から得られた仮説を実証するための研究は、データ収集の準備が整い次第早急に実施予定である。 新たに仮説の設定が必要な研究に関しては、2年目の前半で文献研究を進め、1つの仮説を設定する。そして、2年目後半にデータ収集できるように研究を進める予定である。余力があれば、3年目以降に実施予定の研究仮説も2年目で立てられるように準備を進めたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初計画より出張が1回分減ったことにより次年度使用額が生じた。本金額については、研究遂行の上で利用を想定している、インターネット調査にかかる費用として充当する予定である。
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