研究課題/領域番号 |
19K14427
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
松浦 隆信 日本大学, 文理学部, 准教授 (40632675)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 不安 / 心理療法 / 注意 / 生活関連動作 / APDL / ADL |
研究実績の概要 |
本研究では、不安を軽減するために必要な心構えや行動に関するメカニズムについて、基礎心理学の知見に基づき検討を進めている。今年度の研究においては、不安を軽減するために必要不可欠と考えられている、不安に対する注意の焦点化を緩和する方策として、家事などの日常生活に関連する動作(生活関連動作)が有効に作用するか否かを、質問紙調査を用いて検討した。調査では、生活関連動作、注意の向け方、不安感を測定し、それらの関連性を統計的に検討した。その際、年代や性差による傾向の違いなども考慮に入れて統計分析を行った。 その結果、生活関連動作の量が多いことと、注意の向け方、具体的には注意を特定の物事に向けること、注意を意図的に別の対象に切り替えること、一度に複数の対象に注意を向けることなど、様々な注意の転換機能との間に関連があることが示唆された。また、注意の向け方と不安感にも関連がみられ、注意の転換が図れると不安が軽減される傾向にあることも示唆された。さらに、これらの関連性は、年齢、性別、居住形態などの組み合わせによって若干異なり、女性かつ同居家族がいる場合において年齢が上がるとともに生活関連動作の量が多く、不安の軽減に寄与する傾向が強いことが示唆された。 以上の結果より、不安の軽減を図る上では注意を不安以外の対象に向けることが重要であること、その際に生活関連動作を積極的に行うことの有用性が示唆された。また、これらの関連性は人々の生活状況や性別役割意識などの社会環境要因によって左右されることが示唆されたため、メンタルヘルス維持のためにも、生活関連動作が少ない人々に対して意識的な取り組みを促す情報発信などの必要性も明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度より引き続き、新型コロナウイルスの影響により、調査データ収集の困難が想定されたが、オンライン調査に切り替えることによって、予定通りのデータ収集が行えた。また、向こう2年間の調査に向けての仮説生成、ならびに過年度までに行った調査結果の学会発表も計画通りに行えたことなども鑑み、研究全体としてはおおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
令和4年度は本研究の最終年度となるため、今年度までに収集した調査データを用いて、複数の学術論文を成果として取りまとめることを喫緊の課題として推し進めていく予定である。具体的には、「不安を感じても構わない」との心構えを有しつつ不安を感じる場面に対して行動することにより不安の軽減が図れたことを示すデータに基づき論文を執筆する。その上で、今年度の研究で明らかとなった、生活関連動作と注意の転換機能との関連に関する論文執筆と、今年度の研究結果の知見を補完する新たな研究について、事前に立てていた研究計画を改定の上、追加データの収集まで進めていきたい。併せて、日本心理学会などでの学会発表を通じた研究成果の公表も行う計画である。
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次年度使用額が生じた理由 |
昨年度から引き続き、新型コロナウイルスの影響により、研究成果の公表に伴う学会出張で利用予定であった旅費の支出が全くできなかった。また、オンライン調査が中心となったため、紙媒体で作成予定であった質問紙調査の作成にかかる用紙代、印刷代等もすべて使用が無くなった。これらの要因から、次年度使用額が生じた。この金額については、次年度の論文執筆に伴い発生する必要経費、新規データ収集に伴うオンライン調査費用、統計分析用のソフト購入などを中心に、次年度の研究遂行に必要な経費として全額用いる予定である。
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