研究課題/領域番号 |
19K14428
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研究機関 | 立教大学 |
研究代表者 |
谷川 哲子 (山田哲子) 立教大学, 現代心理学部, 准教授 (70792373)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 知的障がい / 障がい者家族 / 親なき後 / 心理教育 / 多職種連携 / 質的研究 |
研究実績の概要 |
本研究は,知的障がいのある子どもの親が抱く最大の不安といわれる「親亡き後の不安」に着目している。日本では,知的障がい者のケアを,親が限界まで担う傾向があり,「親亡き後の不安」は計り知れない。そこで,知的障がいのある本人を含む家族が,主体的に将来のプランニング(どこに住むか?誰と住むか?誰のケアを受けるか,受けないか?など包括的なプランニングを想定している)を行うため,知的障害者家族を対象に開発された心理教育プログラム(山田,2018) の修正および実践,その効果検討を本研究の目的としている。 その際,心理領域の専門家の知見だけでなく、司法領域や福祉領域などの多職種の専門家,そして知的障がい者およびその家族の体験からボトムアップにて導き出された知見を活かし,心理教育プログラム(山田,2018) の修正・精緻化を行う。 2021年度は,研究計画を新型コロナ感染対策の観点から変更を行ったため,その倫理申請を所属先の研究倫理審査委員会に提出する準備を行い,また,2019年度までの研究成果について学会誌に投稿,受理された。当該論文は,知的障がいのある子どもをもつ親を対象に親亡き後をテーマとして心理教育プログラムを実施し,参加した協力者のアンケートの自由記述について,質的分析と量的分析の両側面から分析を行ったものである。その結果,①プログラムの新しい視点として「法的な内容」や「家族の事例」が挙げられていたこと,②しかしながら今後実践してみたい準備には「法的な内容」は挙がらず,家族が抱く法的制度利用のハードルが示唆されたこと,さらに③テキストマイニングの結果により,自由記述には「少し」「少しずつ」などの言葉が相当数抽出され,知的障がい者家族の「将来についてはスモールステップで進みたい」という気持ちがアンケート結果からも読み取れたことなどを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2021年度も新型コロナ禍が続き,当初計画していた専門家のグループインタビューやフォーカスグループ,施設見学の実施が困難であった。そのため,オンライン実施の体制の整備(計画の倫理申請)や,これまでの研究成果の発表を行った。
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今後の研究の推進方策 |
施設見学については,施設のご意向を優先することになるが,可能な範囲で実施をしていく。 知的障がい者および家族の支援を行う多職種の専門家によるフォーカスグループについては,実施方法をオンラインに変更して今年度実施を行う予定である。司法分野からは障がい者の権利や成年後見制度に明るい弁護士,福祉分野からは知的障害者通所施設で働く社会福祉士資格をもつ施設長や支援員を対象とする。
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次年度使用額が生じた理由 |
専門家を対象としたフォーカスグループインタビューおよび計画されていた地方の入所更生施設見学が都合により未実施になったため、専門家に対する謝金やインタビュー逐語録の業者委託費、旅費などが未使用になったのが主な理由である。 次年度は延期になった上記専門家を対象としたフォーカスグループインタビューをオンラインも対応可能な状態にしての実施、および可能な範囲での入所更生施設見学を実施に向けて、使用を計画している。また,引き続き研究成果の発表(論文投稿)の校閲費などに使用する。
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