本研究課題においては,以下について明らかとなった。 (1)大学生の就職活動において「現実的将来の検討」や「価値の明確化」のための行動を経験した者のほうが,そうでない者に比べて,その後の社会人生活の初期適応が良好になる傾向があった。(2)価値の明確化を含んだ大学生の就職活動継続支援プログラムは,就職活動における「現実的将来の検討」の経験や活動後の「満足度」,社会人生活における適応を予測する「価値に沿った行動へのコミットメント」を高める効果があった。(3)従来より行われている技術的側面の指導に特化した就職活動プログラムにおいても,就職活動後の「満足度」を高める効果があったが,就職活動における「現実的将来の検討」の経験や「価値に沿った行動へのコミットメント」については有意な変化はみられなかった。 以上のことから,本研究課題において確立を目指した「価値の明確化」の手続きを含んだ大学生の就職活動継続支援プログラムについて,社会人生活への円滑な移行という観点から一定の有効性が示されたと考えられるが,一方で今後の検討に向けて以下の課題や展望があることも明らかになった。 (1)大学生の就職活動の継続のあり方には個人差の要因が大きく,活動の継続に対する支援プログラムの適切な実施時期や方法については,継続的に検討していく必要がある。(2)就職後の適応状況については,支援プログラムの後のフォーローアップを行うことで,経時的に精査していく必要がある。(3)従来的な技術的指導に基づくプログラムにも一定の効果が認められたことから,共通する要素として,自身だけでなく支援者とともに将来検討を行うことによるメタ認知能力の向上に伴う職業選択の納得感の獲得や,支援者のメンターやモデリング対象としての機能が含まれている可能性がある。
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