研究課題/領域番号 |
19K14434
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研究機関 | 比治山大学 |
研究代表者 |
三好 真人 比治山大学, 現代文化学部, 講師 (50758505)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | アルコール問題 / 断酒会 / 心理教育 / 大学生 / 予防 |
研究実績の概要 |
本研究は,大学生を対象としたアルコール問題の理解を深める効果的なプログラムを作成し,その効果を評価するものである。これまでの大学生を対象としたアルコール問題への講義・ガイダンスには,「担い手の認識および力量不足」,「深刻さが伝わらない」ことが障壁となってきた。そこで,「担い手問題」には,「アルコール障害対策推進基本計画」の1ピースとして位置づけられる「断酒会」主導者を組み込む。さらに,「深刻さが伝わらない」問題には,アルコール問題への誤った認識を精査することで〈怖いもの〉というメッセージのみではない内容にする。 初年度は,プログラム作成のための基礎データ収集と分析を実施した。 【成果】先行研究をまとめ,アルコール問題に関する認識・知識を問う質問紙を作成した。質問紙では,まずアルコール依存症という言葉を聞いたことがあるか等基本的な情報を求めた。さらに「お酒」および「アルコール依存症」を〈刺激語〉としたイメージ連想法を作成した。また,アルコール依存症に関する知識の正誤問題を作成。2カ所の大学にて,記述式質問紙を配布し回答を求めた。大学生207名(A大学136名,B大学71名)のデータを得た。 得られたデータを分析し,大学生が抱くアルコール問題への認識をまとめた。問題を正しく理解するうえで重要となる「否認」「自助グループ」といった内容の出現は極めて少なかった。また,「おじさん」や「男性」のような偏見的見解も多く,今後の心理教育における留意点が得られた。さらに結果を「断酒会」主導者に開示し,大学生へ伝えたいことを聞き取る検討会を2020年3月に実施した。断酒会主導者17名(男性16名,女性1名)の参加を得て,およそ2時間のディスカッションを実施した。討議の内容をまとめ,断酒会主導者の視点から見た大学生へ伝えたい内容を分析した。これらの結果を統合し,現在プログラムを開発中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度の目標は,2年目に実施する啓発プログラムを作成するための基礎データを収集・分析することであった。収集のための質問紙が作成され,作成した質問紙にてデータを収集した。収集の段階で,当初計画していた対象である「未成年」大学生だけにフォーカスして調査を行うと収集できるデータが少なくなってしまうこと,また,飲酒環境が頻繁にあるだろう大学生において未成年と成人の区別はそれほど効果を持たないこと。プログラム実施において受講者を広く募りたいことから,大学1・2年生全体をターゲットとした。 収集したデータは,定量的・定性的手法により分析された。分析した結果を「断酒会」主導者へ開示し,内容を検討することでプログラムに盛り込む情報を精緻化することができた。これらの進捗状況から,「おおむね順調に進展している」との自己評価をする。一方で,新型コロナウイルス感染症対策の影響で,当初予定していた断酒会主導者とのプログラム検討が1件延期となってしまった。そのため,断酒会との検討が未完でありプログラムの完成までは至っていない。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の今後の予定は,初年度に実施できなかった断酒会主導者とのプログラム検討を再開し,プログラムを完成させる。そして完成したプログラムを実施する。さらに,プログラムの効果を評価することである。しかし,新型コロナウイルス感染症対策により,断酒会主導者を集めて検討会を開くことが困難である。また,プログラム実施に関しても,大人数を対象とした対面講義方式で実施する予定であったが,当初の計画で実施することは困難である。対応策としては,遠隔で実施し評価を行うということが考えられるが,受講者のプログラムへ取り組む様子を観察することができないため,現実的ではない。また,プログラムには断酒会会員によるリアルタイムでの体験報告を含むことでインパクトを大きくする計画であった。その実施も難しい。2年目は,初年度での成果のパブリッシュに努め,プログラム実施は事態が収まった翌年度以降に実施することを計画している。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初は,初年度に断酒会主導者との打ち合わせを済ませる予定であったが,新型コロナウイルス感染症対策のため,実施が延期になってしまった回があった。そのため,旅費・謝金にかかる費用の一部が繰り越しとなった。 次年度以降に事態が落ち着き次第,打ち合わせを実施する予定である。
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