研究課題/領域番号 |
19K14434
|
研究機関 | 常葉大学 |
研究代表者 |
三好 真人 常葉大学, 教育学部, 講師 (50758505)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | アルコール問題 / アルコール依存症 / 心理教育 / 断酒会 / 大学生 |
研究実績の概要 |
本研究は,心理学を専攻する大学を対象にアルコール問題の理解を深めるための効果的なプログラムを作成し実施するものである。これまでの先行研究で対人援助職を目指す学生が抱く「アルコール依存症」へのイメージ調査は,保健・福祉系学部の大学生,医学生,看護専門学校生などが対象となってきた。一方で先行研究では,アルコール依存症の支援の一助となる心理的支援を学ぶ学生を対象とした研究はない。アルコール依存症は否定的な印象が強く,誤解や偏見の多い病である。先行研究では,アルコール依存症は他の精神疾患に比べて病気という認識が低く自己責任であるという意識や社会的拒絶,陰性感情が高くなっている。そこで,アルコール依存症への支援には,「最も重要なのはアルコール依存症への誤解と差別の解消である」とも言われてきた。大学生を対象に,大学生自身がアルコール問題に巻き込まれないための教育と,将来援助職に就く可能性のある者のアルコール問題への差別や偏見を解消するプログラムを実施することを目標とした。 そこで,まずは心理学を専攻する大学生が抱く「アルコール依存症」のイメージへアプローチすることとした。2019年度に,異なる地方にあるA大学・B大学に通う心理学を専攻する大学生193名が質問紙調査を実施した。なお,A・B大学ともに臨床心理士養成指定大学院および公認心理師カリキュラムを有する。両大学のカリキュラム上,専門的な知識を習得する以前の1・2年生を対象に調査を行った。 ここで得られたデータをもとにアルコール依存症への誤解や偏見を抽出した結果を「断酒会」主導者に開示した。2021年度には,断酒会指導者とzoomを用い打ち合わせを実施しアルコール問題への理解を深める教育プログラムを作成した。実施に向けての準備を整え,新型コロナウイルス感染症が比較的落ち着くであろう2022年度に実施する計画をたてた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2021年度も新型コロナウイルス感染症が落ち着かずキャンパスに断酒会会員を入れるプログラムを実施することが出来なかった。一方で,断酒会会員とはzoom等を用いた遠隔での打ち合わせを実施し,プログラムの精緻化を行い実施の計画をたてていった。また,2019年度に得たデータを分析し学会誌へ投稿,査読が終了し掲載された。断酒会の参加者の体験談をプログラムに盛り込むことを計画するなかで,断酒会のような自助グループに関する理解を深める文献研究を行った。プログラム内でも断酒会(自助グループ)活動の意味を強調するために,自助グループのオリジナリティを検討する研究を行い,学会にて報告した。
|
今後の研究の推進方策 |
新型コロナウイルス感染症対策を実施しながら,キャンパス内で断酒会会員との協働的教育プログラムを実施することが可能となったと考えている。2022年6月に2か所の大学にてプログラムを実施する予定がたっている。プログラム実施時には,2019年度に作成した質問紙調査を実施し本プログラムの評価を行う。さらに,受講生をフォローアップし,受講した効果のあり方を問うインタビューを実施する計画である。プログラムの受講生は計400名になる予定であり,それらのデータを集計して最終的な分析結果を得ることを計画している。
|
次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症対策のため,プログラムの実施が次年度に変更となった。そのため,プログラム実施にかかる経費が未使用となったため。
|