本研究は大学生を対象としたアルコール問題啓発プログラムを当事者である断酒会会員と協働実施し、その成果を評価することである。1年目から3年目にかけて、プログラム作成を行った。作業ではまず、大学生の抱くアルコール依存症へのイメージを調査し、誤解や偏見につながるイメージを抽出した。調査を断酒会主導者たちに開示し、主導者と研究者のディスカッションを通して大学生に伝えるべき内容を盛り込んだプログラムを作成した。プログラムはアルコール問題に関する基礎知識と当事者の体験談によって伝達される内容になった。 令和4年度は最終年度として、コロナ禍において実施できていなかったプログラムの実施を行った。プログラムの実施者として当事者である東京断酒新生会会員の協力を得た。東海地方の私立大学にて①2022年5月・74名、②2022年11月・93名の2度実施した。さらに、都内私立大学にて③2022年6月・217名、④12月・35名の2度実施した。プログラム構成は4回とも同一の内容であり複数回受講する者はいないように設定した。さらに、プログラムの内容を受講者がどのように受け取ったのか、およびプログラムにて伝達された学びを実生活に活かすことが出来ているのかを調査するために事後インタビューを行った。①の事後3名、②の事後2名、③の事後1名の計6名を対象にインタビューを行った。本プログラムの評価は事前事後テストデザインにて実施した。①②③の受講者計380名はプログラム実施の2―4週間前にアルコール依存症への知識とイメージが問われる事前テストに回答した。受講後にも同一のテストを実施した。回答の事前事後が比較された結果、アルコール依存症への理解において正しい方向への有意な変化を認めることができた。 本研究で作成したプログラムは今後も持続的に実施可能な体制になっており、次年度以降も継続される予定である。
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