研究課題/領域番号 |
19K14435
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研究機関 | (財)冲中記念成人病研究所 |
研究代表者 |
玉田 有 (財)冲中記念成人病研究所, その他部局等, 研究員 (40813720)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | メランコリア / 内因性うつ病 / 病前性格 / 感情気質 / 評価尺度 / TEMPS-A / 神経症的傾向(neuroticism) |
研究実績の概要 |
2019年度は、症例データ収集の準備として、メランコリアに関する広汎な文献調査を行い、独自のメランコリア評価項目を作成した。また、Parkerが開発したメランコリアの精神運動障害を評価するCORE尺度の日本語版を作成した。これらの評価尺度などを用いて、虎の門病院など6施設において、大うつ病性障害106例の症例データを収集した。 2019年度の研究実績は2点である。 (1)【メランコリア評価尺度の開発】独自のメランコリア評価項目を用いて収集したデータを因子分析した結果、24項目6因子が抽出された。各因子は、1)「誘因なし・当惑・日内変動」、2)「気分の非反応性・真面目な人」、3)「貧困・心気妄想」、4)「身体的異常感覚」、5)「制止」、6)「過呼吸・動悸」であった。第6因子は非メランコリアの特徴と考えられた。24項目のメランコリア尺度の合計得点は、DSM-5のメランコリア診断やCORE尺度の得点との間で正の相関関係が見られ、基準関連妥当性が示された。また6因子それぞれのクロンバックα係数は概ね0.6台であった。(日本精神神経学会学術総会 優秀発表賞受賞) (2)【メランコリアに特徴的な感情気質の研究】DSM-5の大うつ病性障害におけるメランコリア患者(52例)と非メランコリア患者(54例)、および健常者211例の3群のあいだで、感情気質の特徴が異なるかどうか、TEMPS-AとEPQ-Rを用いて検証した。その結果、メランコリア群は、非メランコリア群に比べて、不安気質と抑うつ気質が少なかった。また、不安気質と焦燥気質は、非メランコリア群に特徴的だった。神経症的傾向はメランコリア/非メランコリアともに健常者よりも高かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
収集したデータは、目標の症例数には及ばなかったが、十分に解析可能な症例数に達した。因子分析を行い、24項目のメランコリア評価尺度を作成することができた。ただし、信頼性が高くない下位尺度があったため、さらに改良が必要であると考えられた。また、メランコリアにおける感情気質の特徴を実証的に明らかにすることができた。メランコリアの臨床的特徴に関する重要な知見を得ることができたため、研究は順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
臨床的に有用なメランコリアの評価尺度を開発するために、さらに解析方法を工夫して研究を継続する。また、対象症例においてベースライン登録から12ヶ月後の追跡調査を行い、転帰や診断的安定性を含めて解析を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
2020年3月に開催されると考えていた国際学会が2020年6月に開催となったため、今年度に旅費として使用する予定だった助成金を、次年度に繰り越すことになった。
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