研究課題/領域番号 |
19K14435
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研究機関 | (財)冲中記念成人病研究所 |
研究代表者 |
玉田 有 (財)冲中記念成人病研究所, その他部局等, 研究員 (40813720)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 精神運動障害 / CORE尺度 |
研究実績の概要 |
2020年度は、精神運動障害(PMD)に着目し、メランコリアの主観的症状を同定する研究をおこなった。PMDとは、制止や焦燥といった運動面にあらわれる徴候を指す。メランコリアの中核的な特徴であり、ほとんど唯一、定量的な評価が可能なメランコリアの症候といわれている。昨年度に日本語版を作成したCORE尺度は、PMDを主観的症状ではなく、行動学的な特徴として評価する尺度である。 我々は、「PMDと相関する抑うつ症状が、メランコリアに特徴的な主観的症状である」という仮説を立て、昨年度に収集した106名の大うつ病性障害患者の症例データを用いて、CORE尺度の得点を従属変数、さまざまな抑うつ症状を独立変数とした重回帰分析をおこなった。その結果、1) 感情喪失の感情、2) 抑うつ性妄想、3) 当惑感、4) 決断困難、5) 他人への攻撃性がない、という5つの症状学的特徴が、DSM-5のメランコリア基準の項目よりも、CORE得点と相関することが示された。この5項目は、伝統的に内因性うつ病(メランコリア)の特徴とされてきたものであり、実証的に同定されたメランコリアの主観的症状と考えられた。この結果は、英文誌に投稿し、査読中である。 また、第116回日本精神神経学会学術総会(2020年9月)において、内因性うつ病をさまざまな側面から検討するためのシンポジウムをコーディネートした。このシンポジウムは、精神神経学雑誌の特集として採択され、2021年度に論文として掲載される予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
精神運動障害に着目することで、メランコリアの5つの主観的特徴を実証的に同定することができた。この5項目は、臨床的に有用なメランコリアの指標となる可能性がある。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、2019年度に予備的考察をおこなった感情気質とメランコリアの関係について、さらに解析を進め、英文誌に論文を投稿予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
本来であれば、2020年度までの研究計画だったが、新型コロナウイルスのパンデミックによって、国際学会等が延期となったことや、論文の執筆が若干遅れたことなどの理由で、研究期間の延長を要した。 次年度に、英文校正費や論文出版費、図書購入費、学会参加費などで使用する予定である。
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