研究課題/領域番号 |
19K14448
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研究機関 | 奈良女子大学 |
研究代表者 |
加藤 奈奈子 奈良女子大学, 生活環境科学系, 助教 (40583117)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 可視化情報 / ストレス / 閉鎖環境 / 過統制 / パーソナリティ |
研究実績の概要 |
本研究は、高ストレス状況下においてどのようなパーソナリティ特性を有する人が可視化情報の活用にリスクが伴うのか、または適切なストレス対処がなされるのかという点の解明をテーマとしており、初年度は過去の調査結果を分析することで特に、コントロールが行われる要因について質的分析を行い、過統制が行われる状況として経験をどのように活かすのかという点を考察することで次年度の調査計画策定の基礎となりうる検討を行った。 1.南極越冬隊員における経験者の体験と未経験者の体験の質的差異についての検討 前研究において行ってきた質問紙調査データの経験者と未経験者で体験の差異があるか検討をした。その結果、経験者の方がミッションの4分の3の時点で感情や気分が増大する「第3四半期現象」と類似する結果となったため、経験者の帰国後インタビューから「越冬生活について」質的分析を行ったところ、経験者においては経験があるがゆえに他視点を保持したまま経験を行わなくてはならないことや、客観的な評価を行うなど、自律的にコントロールされる在り方が伺えた。分析結果は、経験という個人的要因が過統制に繋がる可能性を示唆していると思われ、成果の一部は南極医学医療ワークショップにて発表した。 2.デジャヴュ体験における語りの検討 デジャヴュ体験とは、過去に体験がないにも関わらず既に体験していたと感じる体験である。「体験があるかないか」という自己モニタリングの機能が体験の性質に含まれていることから、本研究の情報をいかに統制するのかという点に関わっており、体験内容をを分析することによって、自然に自分をモニターするようなこころの機能が可視化によって疎外されてしまう可能性について言及した。成果は紀要論文で論文化を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2019年度で実施する予定であった研究計画は、高ストレス状況下における個別のストレス要因と自己統制との関係を、これまでの調査結果を再分析することによって検討することであった。研究計画時点では、以前の調査で使用した内田クレぺリン精神検査の結果を再分析することで過統制となりうる個人内要因を考察することを検討していたが、インタビュー調査データなどを用い別の側面から検討することができたという点、さらに2020年度の調査計画の策定において有益な資料になりうる知見が得られたという意味では、本来の計画とは異なるものの概ね順調に進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
研究テーマの遂行に関しては、新型コロナウイルス(COVID-19) の感染拡大による研究環境の変化に応じて、研究内容および調査計画の修正を行って研究を遂行する予定である。 1.研究成果の発表に関する修正:次年度は、閉鎖環境における個別のストレス要因に関する調査結果を国際学会で発表する予定であったが、新型コロナウイルス(COVID-19)の影響で国際学会が開催されないため、当初の予定を変更して再来年度での成果発表をし、多角的な観点から分析を行う予定である。 2.日常生活における可視化情報とパーソナリティ特性に関する調査についての修正:ハーディネス尺度および不安尺度をもちいた質問紙のスクリーニング、およびその後対面での視線分析を利用した可視化の調査を当初行う予定であったが、新型コロナウイルス(COVID-19)の影響で対面での調査において、感染予防対策を講じる必要性から現在、調査計画の修正を行った上で実施を検討している。調査人数の変更や対面でない形式での調査の実施などを検討する予定である。 3.閉鎖環境下でのパーソナリティ特性とストレス評価に関する研究の実施:本研究テーマは、主に南極越冬隊などにおける長期閉鎖環境下でのストレスとそれに対する過統制要因となりうる個人の性格特性についての検討であったが、今般の新型コロナウイルス(COVID-19)の感染拡大を受けて、日常生活においても半閉鎖的な生活を送ることとなった。今般の生活においてどのようなストレスを受けて生活を送っていたか、また可視化情報により過統制にならなかったかなどを検討するべく、質問紙項目の選定を行いオンラインでの質問紙調査の実施を行う予定である。本調査により、閉鎖環境下でのストレスと対処に関しする多面的検討が期待される。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究計画時に予定していた、内田クレぺリン精神検査に関するインタビュー調査や医学医療ワークショップにて発表するための旅費等にあてる予定であった旅費費用は、分析対象を変更したことおよび、発表のための旅費の開催者負担によって支出する必要がなくなった。そのため本年度使用予定の額よりも下回る支出となった。 次年度は、今般の新型コロナウイルス感染拡大(COVID-19)の影響で追加調査としてオンライン調査を行うことを研究計画に組み込んでおり、業者に依頼するオンライン調査費用の一部として使用することとする。
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