研究課題/領域番号 |
19K14448
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研究機関 | 奈良女子大学 |
研究代表者 |
加藤 奈奈子 奈良女子大学, 生活環境科学系, 助教 (40583117)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | こころの可視化 / 内田クレぺリン精神検査 / 過統制 / 視線分析 / 箱庭療法 |
研究実績の概要 |
2021年度は、(1)予定していた調査の一部を実施し、まとめたものを国際学会で発表したこと、(2)心理療法における可視化についての検討を行ったことの2点を主に行った。 (1)調査の実施および国際学会での発表 研究実施計画に即して、視線分析カメラを装着した状態での内田クレペリン精神検査を実施し、パーソナリティ特性との関連の検討を行った。国際心理学会にて、3名のデータの事例検討により、ハーディネスの高さよりもセルフモニタリングが課題の安定した遂行に影響しているという示唆についてポスター発表を行った。また視線分析の結果、過統制のバリエーションとして「目標値の確認」「おさまらない揺れ」「直近値の確認」をあげ、特に疲労が顕著になる時点においてこうした項目が見られること、一方で「直近値の確認」など作業の安定した遂行にポジティブな影響を与える統制の在り方があると結論付けた。 (2)心理療法における可視化についての検討 心理療法の中でも、自分の内的なイメージを外側のアイテムに託す「可視化」の要素が含まれる箱庭療法に着目し、今般の新型コロナ感染症の流行においてオンライン等カウンセリングの状況が従来よりも制限される中で、オンラインという視覚以外の感覚が制限された中での箱庭の従来の箱庭が持っていた特性との異同を調査によって明らかにすることを試みた。その結果、オンライン箱庭は従来の箱庭制作体験とは異なるものの、見守り手との関係などほかの要素に働きかける機序をもつことを示し、調査の結果の一部は紀要論文にまとめた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
本研究は視線分析カメラの装着等、対面での調査の実施が計画上必要であったが、新型コロナ感染症の影響で、対面での個別調査が実施できなかったことにより、本来1年前に行う予定の調査がずれ込み、一部しかできなかったことが研究の遅れに影響していることがあげられる。2021年度こうした状況を受けてオンライン調査に切り替えることも考慮したが、様々な観点から実行に移すことが難しく、また国際学会が1年遅れての実施であったことから、予定していた研究発表および研究遂行に必要な視点を得ることができなかったことも影響し約1年遅れた状態で研究が遂行している。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、本年度実施した視線分析カメラを用いた研究結果についてさらに詳細に分析し、統計的処理を行ったうえで研究成果をまとめ、有益となりうるようなパーソナリティ特性について明らかにすることを予定している。 また、2021年度に行った心理療法における「可視化」の検討という視点については、従来の箱庭療法の比較やその現代性といった点で興味深い結果であったと思われたため、さらに追加調査分析を行うことで「可視化」が有益に働く要因、もしくは阻害する要因等を検討し学会発表等により公表し、発信していくことを予定している。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度、視線分析カメラを使用した調査の一部を実施したが、視線分析カメラは購入する予定であったものが、カメラの正確性について購入する予定額のものでは不十分であることが判明し他の研究室にあるものを使用させていただいたことにより使用しなかったこと、本来出張予定であった学会がオンラインでの開催であったことが影響している。次年度は、本年度の調査の結果を分析すること、さらに新たに見出された点から心理療法における可視化について検討するため追加調査をすること、そうした調査結果をオンサイトの学会で発表することを予定しており、研究遂行のため使用する予定である。
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