研究課題
大学生は、うつ病を経験する可能性の高い時期と考えられている。この時期にうつ病を発症すると慢性的な経過をたどり、対人関係の困難や、学業成績の低下などの否定的な結果に至ることが多いと指摘されている。そのために、保健管理センターなどの大学機関での早期対応が必要である。そこで、本研究では、まず抑うつ症状を有する大学生の特徴を明らかにする。次に、抑うつ症状の程度によって群分けを行い、抑うつ症状を有する大学生を対象にSimple Behavioral Activation (BA)を実施し、Simple BAの効果検証を行う。そして、残遺症状(抑うつ症状)に応じて行動的な特徴に違いがあるかを検討する。本研究を実施することで、大学機関等で効果的で実施可能な治療法の確立に向けた貴重なデータを有することが可能となる。本年度は、インターネットを利用して大学生800名に対して調査を実施した。まず、学生相談などでカウンセリングを受けている大学生と受けていない大学生の抑うつ症状について検討した。その結果、カウンセリング等を受けていない大学生の中にも抑うつ症状が高い者が一定の割合でいることが明らかになった。この結果については、論文にまとめて投稿し、現在審査中である。次に、価値に沿った行動の程度によって大学生を群分けし、行動的な特徴と抑うつ症状の違いについて検討した。その結果、価値に沿った行動をしている大学生は、そうでない大学生よりも、活動をスケジュール化して取り組み、普段の生活で楽しみを感じている頻度が多く、抑うつ症状は低かった。そして、価値に沿った行動をしている大学生は、マインドフルネスやセルフ・コンパッションの得点も高いことが明らかになった。
2: おおむね順調に進展している
本年度予定していた第1回目のインターネット調査を行うことができた。そして、その結果を基に1本論文を投稿し、現在審査中である。また、横断的なデータを基に、行動的な特徴に関する検討を行っている。以上のことから、概ね順調に進展していると考えられた。
2年目は、第2回目のインターネット調査を行い、縦断的データを用いて大学生の行動的な特徴を検討する。そして、抑うつ症状を有する大学生を対象にSimple Behavioral Activation (BA)を実施する予定である。
研究計画は概ね順調に進んでいるが、予定していたインターネット調査の費用に少しあまりが生じた。研究費を次年度に一部繰り越し、2年目のデータ収集の費用に使用する。また、1年目で明らかになった結果を令和2年度の早い時期に論文としてまとめるために、英文校閲費、掲載料などに使用する予定である。
すべて 2019
すべて 学会発表 (2件) (うち国際学会 1件) 図書 (2件)