本研究の目的は、まずは抑うつ症状を有する大学生の特徴を明らかにすることであった。そこで、インターネット調査を縦断的に実施して、①カウンセリングを受けていない大学生の抑うつ症状の検討、②うつ病の発症と関連する要因の検討、③縦断的なデータを用いて、単純行動活性化モデルの妥当性を検討することであった。 ①としては、カウンセリングを受けていない大学生のうち、37.57%の大学生が高い抑うつ症状を有することが明らかになった。②については、閾値下うつの基準に当てはまる123名の大学生を縦断的に経過観察して、抑うつ症状の悪化と関連する要因を検討した。その結果、1年後に42名は健常群、68名は閾値下うつ群、13名はうつ病群の基準に当てはまった。次に、閾値下うつ群からうつ病群への変化と関連する要因を検討した。その結果、閾値下うつ群からうつ病群へと変化した群のみ、回避行動や反すうとセルフ・コンパッションの-Isolationの得点が有意に増加することが明らかになった。③については、縦断的データを用いて、単純行動活性化モデルの妥当性を検証した。その結果、これまで考えられていた行動的要因に加えて、セルフ・コンパッションを含んだモデルの妥当性は示された。 次に、うつ病の診断基準などに当てはまる大学生に対して、単純行動活性化を実施し、その効果を検証した。なお、うつ病を有する者に対しては、回避行動や反すうへの治療も推奨されているために、単純行動活性化後に回避行動や反すうに対する介入も行った。本研究では、5回の単純行動活性化のみの効果を検証するために、介入前から5セッション後についての効果を検証した。その結果、5週間後の抑うつ症状は有意に改善した(p < .05)。
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