研究課題
①4名の症例検討の結果から、集団行動活性化療法によって、疼痛に関連する生活支障が改善すること、②行動活性化療法による客観的な疼痛の数値の推移にはパターンがあること、が明らかになった。本年度は、疼痛性障害に罹患する患者6名に対して集団行動活性化療法を実施し、治療開始前の脳画像所見を取得した。さらに、昨年度4名に実施した集団行動活性化療法についての症例概要について3回学会発表を行った(世界認知行動療法会議:ポスター発表、福島県運動器疼痛セミナー:口頭発表、日本臨床神経生理学会:大会企画シンポジウム)。いずれの症例においても、主観的に感じる疼痛の程度自体に変化はないが、疼痛に関連する生活の支障度が改善するという傾向が認められた。また、日本臨床神経生理学会にて口頭発表した成果では、客観的な疼痛の数値が、集団行動活性化療法の終了直後に改善するパターン、3か月後に改善するパターン、改善しないパターンが認められ、患者の特徴によるサブグループがある可能性が示唆された。また、本年度に実施した集団療法は滞りなく実施することができ、治療からの脱落した患者は1名もいなかった。以上の内容を踏まえ、①今後、集団行動活性化療法の実施を継続し、②疼痛に関連する生活支障や客観的な疼痛の指標の改善の程度を統計学的に検討すること、③参加者の特徴によるサブグループによって治療効果にどのような違いがあるのかを検討すること、の重要性を見出したと考えられる。
2: おおむね順調に進展している
集団行動活性化療法はすでに15名の患者を対象に実施し、そのうち13名から質問紙による事前事後フォローアップデータの取得を終えている。客観的指標は、事前データは13名から取得済みであり、事後データも随時取得している。次年度のリクルートも6名に実施され、次年度のデータ取得も問題なく行われるように準備をした。統制群のデータも入院患者を対象に順次行っている。成果報告のための予備的解析を行い、今後研究を継続することに問題がないことも確認した。客観的指標の解析については、脳画像研究を行う精神科医および放射線医と連携し、継続的に打ち合わせを行っている。成果報告は、3件の症例報告と1件の研究成果公表をしたため、順調に行われている。一方、集団療法固有の効果を測定する必要性が生じたため、集団療法固有の効果を測定する指標の翻訳作業に取り掛かり、翻訳を終了させ、順次運用予定である。
次年度のリクルートはすでに開始されており、予定通りの人数をリクルートできることが見込まれているため、研究対象者のリクルートには問題がない。また、効果指標の測定と集団療法の運営者の体制も昨年度と同様であり、滞りなく実施可能である。一方、感染症対策により、現在集団療法の実施が見送られているため、オンラインを通じた集団療法の提供も見据えて、実施方法の文献検索やオンライン媒体の整備を進めている。
人件費などの負担が今年度は実質必要性がなくなったため、今年度の必要金額が少なくなっているが、その分、今年度研究が進展したため、海外発表などを行うことができた。次年度以降も海外発表や論文公表できるだけのデータ数が蓄積されてきているため、学会発表やそれに伴う英文校閲費用として利用する必要性がある。また、各種検査費用や集団療法の運営にかかわる費用は継続的に必要となる。
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