研究課題
内受容感覚の予測符号化が身体と感情との関係性を理解する理論として注目されている。 近年、身体感覚の違和感を訴える高齢患者が多いものの、加齢と内受容感覚との関係性に不明な点が多く、内受容感覚の機能不全が加齢や認知機能の低下に起因するのか身体症状症に起因するのか鑑別が難しい。本研究は、内受容感覚の機能不全のうち予測誤差を小さくできない「内受容感覚予測の修正困難さ」を測定する課題を作成し、高齢者も含めた身体症状症の評価指標を開発することを目的とする。本研究課題では、計算論アプローチによって1)健常若年者、健常高齢者を対象に「内受容感覚予測の修正困難さ」を測定する課題を作成する。2)身体症状症患者と健常者を対象に内受容感覚予測の修正困難さと関連する脳神経基盤を明らかにする。3)身体症状患者を対象に1)で作成した課題が身体症状症の重症度を予測するかを検討する。2019年度は上記1)を行うために健常若年者と健常高齢者を対象に実験を行った。7名の健常若年者と1名の健常高齢者を対象に予備実験を行い、内受容感覚予測の修正困難さを測定する課題のプロトコールを検討した。全てのデータが揃った健常若年者4名と健常高齢者1名のデータを解析した結果、高齢者は若年者に比べて内受容感覚を正確に把握すること(Interoceptive accuracy)が難しく、内受容感覚予測の修正することが困難であるという仮説を支持するデータのパターンがみられた。特に、高齢者において内受容感覚予測の修正困難さは試行ごとに増加する傾向にあった。予備実験を踏まえて大規模実験を行う準備を進めていたが、新型コロナウイルス感染症の拡大予防の観点から、実験を中止している。また、上記2)の予備的検討を目的とした国際学会発表を行い、上記3)で用いる身体症状症の診断に用いるSSD-12日本語版尺度作成に関する学会発表を行った。
3: やや遅れている
新型コロナウイルス感染症の拡大防止の観点から実験を中止せざるを得ない状況であったため、データ収集に遅れが生じた。
新型コロナウイルス感染症の収束が見込まれてから、感染症対策に留意しながら実験を再開する。
新型コロナウイルス感染症の感染拡大防止のため実験を中止したことにより,研究参加者と研究補助員のリクルートが行えず,人件費・謝金の残金が発生した。新型コロナウイルス感染症の感染状況を鑑みながら実験を再開する予定である。
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