研究課題
内受容感覚の予測的処理が身体と感情との関係性を理解するモデルとして注目されている。 近年,身体感覚の違和感を訴える高齢患者が多いものの,加齢と内受容感覚との関係性に不明な点が多く,内受容感覚の機能不全が加齢や認知機能の低下に起因するのか身体症状症に起因するのか鑑別が難しい。本研究は,内受容感覚の機能不全のうち予測誤差を小さくできない「内受容感覚予測の修正困難さ」を測定する課題を作成し,高齢者も含めた身体症状症の評価指標を開発することを目的とする。本研究課題では,計算論アプローチによって1)健常高齢者を対象に「内受容感覚予測の修正困難さ」を測定する課題を作成する。2)身体症状症患者と健常者を対象に内受容感覚予測の修正困難さと関連する脳神経基盤を明らかにする。3)身体症状患者を対象に1)で作成した課題が身体症状症の重症度を予測するかを検討する。2021年度は上記1)と2)を行うために健常高齢者と身体症状症患者に対象を絞り,データ収集を行なった。予備実験では,健常高齢者を対象に内受容感覚予測の修正困難さを測定する課題のプロトコールを検討した。健常高齢者のデータを解析した結果,内受容感覚の正確性(Interoceptive accuracy)は試行ごとに向上し、高齢者は内受容感覚の正確性を修正することが可能であることが示された。予備実験の結果から、作成した課題が内受容感覚予測の修正困難さを測定するものであると考えられる。これらの結果について、2つの国際学会で報告を行った。また、上記2)では身体症状症患者(50歳以上)を対象に内受容感覚の修正困難さと安静時のfMRIの計測を行った。内受容感覚の修正困難さでは、身体症状症患者は高齢者に比べて内受容感覚を修正することが難しいということが明らかになった。今後、内受容感覚の修正困難さと関連する脳機能結合について解析を行う。
3: やや遅れている
2019年度と2020年度に新型コロナウイルス感染症の拡大防止の観点から実験を中止せざるを得ない状況であったため,データ収集に遅れが生じている。
新型コロナウイルス感染症の状況に応じて感染症対策に講じながら,対象者数を絞ってデータ収集を行う。具体的には高齢者の行動データと安静時fMRIデータの修正を行う。
2019年度,2020年度に新型コロナウイルス感染症の感染拡大防止のため,実験を中止したことにより,研究参加者と研究補助員のリクルートが行えず,人件費・謝金の残金が発生した。また,参加予定であった国際学会等もオンライン開催に切り替わり,旅費の残金が発生した。今後も新型コロナウイルス感染症の感染状況を鑑みながら,データ収集を行う。またオンライン開催の利点を活かして多くの学会等に参加し,情報収集を行う予定である。
すべて 2022 2021
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 2件、 招待講演 1件) 図書 (1件)
International Journal of Psychophysiology
巻: 168 ページ: S137~S137
10.1016/j.ijpsycho.2021.07.393