研究課題/領域番号 |
19K14462
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研究機関 | 京都文教大学 |
研究代表者 |
茂本 由紀 京都文教大学, 臨床心理学部, 講師 (60823242)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 関係フレーム理論 / 関係フレーム反応 / 漢字迷路課題 / 抑うつ的反すう |
研究実績の概要 |
今年度は昨年度までの研究結果の公表と漢字迷路課題の改良を実施した。昨年度の研究において,抑うつ的反すう者の認知では,ネガティブな思考において刺激間の関係性が構築されているのではなく,ポジティブな思考において刺激間に強固な関係性が構築されていることが示唆された。この研究結果を本年度は公表した。 今年度に実施した研究では,抑うつ的反すう者の認知において,ポジティブ思考に関する刺激の関係性がどのように構築されているかを明確にするため,その測定指標である漢字迷路課題の改良を実施した。これまでの漢字迷路課題では,抑うつ的反すう者の認知を,ネガティブな思考における刺激間の関係性と,感情価が少ない中性的な思考に関する刺激間の関係性から捉えることが可能となるよう開発した。そのため,これまでの漢字迷路課題では,ポジティブ思考における刺激間の関係性の測定は不可能であった。そこで,これまでの漢字迷路課題に,ポジティブ語を導入し,ポジティブ思考における刺激間の関係性の測定が可能となるよう,漢字迷路課題を改良することを目指した。 今年度は改良後の漢字迷路課題で使用するポジティブ語の刺激語選定を実施した。ポジティブ語として選定されている単語の中から,単語親密度を基準として,呈示対象となるポジティブ語を選定した。その後,選定したポジティブ語をもとに,二字熟語として迷路が形成可能となるよう迷路内の漢字の配置を決定した。漢字配置の際には,測定時の二次変数を除去するため,小学校,中学校で学習する漢字を用いた二字熟語であること,1つの迷路内に同じ漢字が2回以上現れないことに配慮し,迷路を完成させた。完成した迷路をもとにプログラミングを行い,漢字迷路課題を完成させた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
昨年度までの研究では,対面での実験に制約があり,参加者を十分に確保できない状態であった。そのため,昨年度までの段階で研究が遅延していた。今年度も昨年度までのコロナの影響が波及し,研究計画全体としては,進捗が遅れ気味である。一方,今年度の研究はおおむね予定通り進み,次年度実施する研究の下地が完成した。
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今後の研究の推進方策 |
次年度の研究では目的を2つ設定し,研究を進める。まず目的1では,漢字迷路課題の完成を目指し,今年度改良した漢字迷路課題の妥当性を検討することである。2つ目の目的は,抑うつ的反すう者の認知的特徴を明らかにすることである。昨年度の研究において,抑うつ者の認知では,ポジティブ思考における刺激間の関係性が強固である可能性が示された。そのため,今年度は,まず改良した漢字迷路課題が,ポジティブ思考における刺激間の関係性の測定指標として妥当性を有しているかを検討する。具体的には,一般成人を対象に,改良した漢字迷路課題と,抑うつ的反すう者の認知的刺激間の強さを測定する指標であるImplicit Relational Assessment Procedure(IRAP)との比較検討を実施する。この比較検討を通して,ポジティブ思考における刺激間の関係性の強さの測定が可能な漢字迷路課題の完成を目指す。 次に,抑うつ的反すう者の認知的特徴を明らかにするため,収集したデータの中から,抑うつ的反すうの程度が高い者と低い者を選定し,対象者の漢字迷路課題およびIRAPの結果を比較検討する。この検討により,抑うつ的反すう者は,ポジティブ思考および,ネガティブ思考のどちらの刺激間の関係性を強く有しているかを明らかにする。この検討により,抑うつ的反すう者の認知的特徴が明らかとなり,抑うつ的反すうへの有効的な介入法を提案することを目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由として,学会がオンライン開催であり,学会発表の際の渡航費用が不要となったこと,コロナの影響により研究全体の進捗が遅延したため,参加者を募集しての実験が後ろ倒しになったことがあげられる。次年度使用額については,学会も対面開催となるため,その渡航費用および,これまでの研究結果を投稿する際の論文投稿費,実験実施の際の参加者への謝金に充当する予定である。
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