本研究では、うつ病による休職者を対象とした復職支援の現状と課題を抽出し、再発・再休職の予防に向けた有効な支援策について検討した。 2019年度は、先行研究のレビューを実施し、うつ病などのメンタルヘルスの不調による休職者に対する現行の復職支援では、復職後の生活をマネジメントしていくための議論は極めて少なく、効果的な介入方法やツールについても十分に検討されていないことが明らかとなった。 2020年度は、①うつ病による休職経験がある労働者535名(男性282名,女性253名)、および②メンタルヘルス不調による休職経験のない労働者600名(男性300名,女性300名)を対象にマインドフルネスがうつ病の休職歴を有する労働者のプレゼンティーズムを抑制し得るかについて検討するためにWEBによる調査を実施した。 2021年度は、調査の結果を分析し、うつ病による休職経験者のプレゼンティーズムの抑制要因について,メンタルヘルスの不調による休職経験のない者との比較検討を行った。 2022年度および2023年度は、上述した調査の分析と考察を行い、学会及び学術論文を通して研究報告を行った。 本研究の結果、うつ病の休職経験者は,相対的にプレゼンティーイズムや仕事によるストレスを高く経験しており、上司・同僚サポートやワーク・ファミリー・バランスを低く評価していることが示された。また、うつ病による休職経験者においては、心理的な仕事の負担(質)やワーク・ファミリー・バランスが低いほどプレゼンティーイズムが高い傾向にあることが示された。以上の結果から、うつ病による休職者への復職支援には、症状へのケアや業務量の配慮だけでなく、再発予防を目的としたマインドフルネスのトレーニングやワーク・ファミリー・バランスの振り返り、仕事の質的な負担軽減につながる支援を充実させていくことが必要と考えられる。
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