研究課題/領域番号 |
19K14464
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研究機関 | 福山大学 |
研究代表者 |
皿谷 陽子 福山大学, 人間文化学部, 助手 (50739761)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 声かけ / 万引き防止対策 / 従業員 / 商業施設 |
研究実績の概要 |
2018年に共同研究者や万引き犯罪専門保安員と共に、店舗内犯罪の防犯行動尺度,防犯意識尺度を作成した。2019年度に広島県内の商業施設の従業員に対し,万引き防止対策としての「声かけ」研修を協力警備会社や犯罪心理学専門の研究者及び万引き犯罪専門保安員が実施した。2018年度に作成した尺度を従業員に回答してもらい,「声かけ」研修の受講有無による,防犯行動尺度及び防犯意識尺度の比較を行った。その結果,研修の有無による統計的有意差は認められなかったが,各尺度の平均評定値は受講済者の方が高くなることが示された。加えて,店長等の役職者を含む正社員とパートアルバイトといった,従業員の分類によっても各尺度の平均評定値が異なり,正社員の方が全般的に各尺度の平均評定値が高くなることが分かった。2020年4月以降も引き続き分析を行っている。 また,2019年に2021年度に実施予定の万引き防止対策「声かけ」の媒介の違いによる印象評定についての予備実験を行った。予備実験は,模擬万引き課題を用いて検証を行った。「声かけ(いらっしゃいませ)」が万引き防止に及ぼす効果を調べるため,倫理審査を経て承諾を得た参加者に模擬万引き課題に参加してもらった。条件は,事物をとる際,音声が呈示される実験条件(18名)と,呈示がない統制条件(18名)であった。課題前に行動基準尺度(永房他,2012),POMS2日本版成人用短縮版,特性罪悪感尺度(大西,2008),課題後にPOMS2,特性罪悪感尺度,模擬万引き課題経験尺度(模擬万引き行動を行う際に感じると想定される感覚の形容詞(例:抵抗感,おもしろさ)25項目から成る)への回答を求めた。 その結果,模擬万引き課題経験尺度における「(万引き行動の)難しさ」が,声かけ群で高く,声かけにより万引き行動のしにくさが増すことが示された。2020年4月以降も引き続き分析を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2019年度は従業員の「声かけ」の万引き防止効果の検証を行う予定であったが,「声かけ」実施前後での万引き件数の変化を尋ねることが難しかった。さらに,Web調査での業種の違いによる万引きされやすい商品の調査が未実施である。 また,2020年度は万引き防止対策の「声かけ」の媒介の違いによる印象評定を実験室での実験及び現場での実施を計画しているが,新型コロナウィルス (COVID-19)の影響により対人に対する実験調査の実施は難しいと考えられる。 上記の理由より,進捗状況として「やや遅れている」と判断する。
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今後の研究の推進方策 |
新型コロナウィルス(COVID-19)の影響により対人に対する実験調査の実施は難しいと考えられる。そのため,2019年度に実施した店舗内犯罪の防犯行動尺度,防犯意識尺度の従業員比較は引き続き分析を行う。実施計画の変更として,2019年度に行う予定であったWeb調査での業種の違いによる万引きされやすい商品や店舗での万引き対策について,個人で意識して行っている店舗での防犯対策についての調査を行う。そして,2021年度に実施予定であった店舗内防犯機器・対策の特徴の洗い出しを行うためWeb調査を行う予定である。 対人に対する実験調査の実施については,新型コロナウィルスの影響を鑑みて予備調査を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
2019年度に行う予定であったWeb調査を実施し,さらに2021年度に実施予定であった店舗内防犯機器・対策の特徴の洗い出しを行うためWeb調査を繰り上げて行う予定である。Web 調査の経費として次年度使用額の金額を使用する予定である。また,新型コロナウィルスの影響を踏まえながら,2020年度に実施する予定である万引き防止対策の「声かけ」の媒介の違いによる印象評定を実験室での実験及び現場での実施の計画を進めていく予定である。
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