研究課題
fMRIによる実験のための準備段階として、安静時の脳機能結合に関する解析を行った。意識可能なレベルの自己価値と意識困難なレベルの自己価値が乖離している状態は、反すうの発症や持続に関わることが先行研究で指摘されている。そのため、安静時の脳活動ネットワークと顕在-潜在レベルの自己価値の乖離状態との関連性を検討した。その結果、高い顕在-潜在的自己価値の乖離は、脳全体の弱い機能分離、線条体の強い媒介中心性と関わっていることが明らかとなった。このことから、反すう持続の神経基盤を検討する上で脳全体のネットワーク、特に機能分離に注目することが重要であることが示唆された。本研究成果は国際誌への投稿準備中である。また、反すうの持続・悪化と関連する要因を調べるための行動課題を作成した。先行研究においては、ワーキングメモリの能力(Nishimura et al., in press)やネガティブ刺激に一度向けた視線をそこから引き離すことの困難さが質問紙で測定した反すうの個人差と関わっていることが指摘されている(Sanchez-Lopez et al., 2013)。そのため本研究でもStroop課題、ワーキングメモリ課題、および眼球運動測定装置を用いたDisengagement taskを開発した。呈示する表情刺激にはAIST 顔表情データベース(Fujimura &. Umemura, 2018)を利用した。また、MRI内での反すう誘導の効果を調べるため、唾液性コルチゾールの採取・測定を行うためのキット購入や保管場所の整備を行った。
2: おおむね順調に進展している
次年度行うfMRI実験の基礎となる解析結果を示すことができ、国際誌への投稿準備も間近である。また、同時に測定する行動課題や眼球運動測定装置を用いた課題の準備が整い、ストレスの測定準備も完了した。
次年度は、実際にMRI内での反すうの持続に伴う脳活動・脳機能ネットワークを調べる。今年度の研究によって不適応的な自己内省には脳全体のネットワーク解析が有効であることが示唆されたため、ネットワーク解析を取り入れた解析を行う。また、MRI内での眼球運動(特に瞳孔径)の同時計測を行うことで脳活動以外の指標も合わせて測定する予定である。
今年度は、すでに取得済みのデータの解析に注力したため新たな実験参加者のリクルート費用や実験準備に関わる物品費の使用が少なかった。そのため次年度の参加者のリクルートのための費用や新たな設備に関わる物品費にあてることとした。
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