本研究は、認知心理実験、fMRIによるイメージング実験を組み合わせ、反すうの持続過程についてのメカニズムを検討することが目的であった。 fMRIを用いた実験については、安静時の脳機能ネットワークと顕在-潜在レベルの自己価値の乖離状態との関連性を検討した。その結果、高い顕在-潜在的自己価値の乖離は、脳全体の機能分離や媒介中心性などと関わっていることが示唆された。このことから、反すう持続の神経基盤を検討する上で脳全体のネットワーク、特に機能分離に注目することが重要であることが示唆された。また、MRI内で単語の自己参照課題を行い、自己についてしている際の脳活動について検討した。なお、このfMRI実験については研究代表者の所属が異動になったため、サンプルサイズや解析に制限があった。 認知心理実験では、ワーキングメモリに関する実験等を実施した。特に本年度では、眼球運動測定装置を用いたデータの解析を行った。実験は、Sanchez et al. (2013)のdisengagement taskの実験デザインを参考に作成した。これは、パソコン画面上に2つの顔刺激(中性、ポジティブ、ネガティブ)を呈示し、手がかり刺激を呈示することで視線を誘導し、どのような感情価が顔刺激からの移動速度に影響を及ぼすかを検討するものであった。収集したデータについて、サンプルサイズが十分でなかったため、視覚的に分析をおこなったところ、感情価による反応時間の違いがみられた。
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