研究課題/領域番号 |
19K14468
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
中山 真里子 東北大学, 国際文化研究科, 准教授 (40608436)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | バイリンガル / 単語認識 / 英語 / 日本語 / マスク下のプライミング |
研究実績の概要 |
本年度は、バイリンガルの語彙処理のうち、日英バイリンガルの第二言語の英語の単語表象の発達に関して、形態素レベルの表象に焦点を当て、研究を行った。つまり、バイリンガルのL2語表記の処理がどの程度深いレベルまで発達するのか計4つの実験を行い、延べ約180人の日英バイリンガルからデータを収集することができた。今年度末までにデータの解析を終え、論文の執筆にとりかかっている。また、大文字と小文字の間における抽象的な文字表象が発達するかどうかを検証するため、新たな変数を加えた実験を行った。
さらに、上記研究と並行して、被験者となるバイリンガルの英語の推定語彙数とTOEIC/TOEFL ITPスコアとの関連性を調べる調査を行った。現在、ETSではTOEICとTOEFL間の換算表を公開していないため、研究機関をまたいだデータ収集を行う場合、バイリンガルの熟練度の連続的な指標を使うことが難しかったが、関連性データを分析することで、今後、異なる研究機関で収集されたバイリンガル被験者のデータに関しても、熟練度と単語処理の関連性を検討することが容易となった。
研究成果の発信としては、実験1のデータを考察した研究経過を国際学会(11月)および国内学会(8月)で発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、年度末までにある程度まとまった数の被験者からデータを収集し、そのデータパターンを分析の上、執筆にとりかかることを予定していたので、それらの作業が計画通り進んだことから、現在までの進捗状況はおおむね順調に進んでいると判断した。
しかしながら、実験間で、一部コンシスタントでないデータパターンがみられたことから、理想を言えば、新たに追加の実験を行うことが理想的であり、このことが、将来的に研究の進捗を遅らす原因となる可能性があることを認識している。
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今後の研究の推進方策 |
本研究費で推進する研究の内容は人を対象とした実験が不可欠であり、また、反応時間など行動指標の正確な測定のためには、オンラインではなく、適切に設備の整った環境で実験を行うことが必要である。そのため、今後、コロナウイルスの感染拡大が収まるまでは、データ収集を行うことが不可能であるか非常に難しい状況に置かれることが見込まれる。
そこで、当面は、現在までに収集したデータを執筆し、論文として発表することに、研究の中心を据えたい。実験を行うことが困難な状況が続いた場合は、査読者から、追加の実験を要求された場合などに、改稿作業を中断せざるを得ないことも見込まれる。今後の研究の進め方であるが、できるだけ、被験者と実験者の健康を優先しながら、その時々の状況にあわせてフレキシブルに対処していくつもりでいる。
最後に研究の対象であるが、日英バイリンガルの英語の単語認識が、どの程度、表記の異なるバイリンガル(Different script bilinguals)であるからなのか、つまり、L1とL2の表記文字が異なるという特性にどの程度影響を受けているのかを検討するために比較対象として表記の同じバイリンガルのデータの収集もより積極的に行っていく予定でいる。
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次年度使用額が生じた理由 |
費消計画の多くをを占める被験者への謝金および人件費であるが、今年度は、(継続的でない)学内における研究支援費の配分があり、そちらのから謝金および人件費を支出することが可能であったため。来年度はそのような予定がないために、費消計画通りの支出となる見込みである。
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