本年度は、これまでの年度で実施してきた研究の論文投稿、追加実験、新規の実験の準備を行った。特に、これまでの知識では予測できないような壮大さを感じるような事態で感じるawe感情に焦点をあて、多角的に検討を行った。それぞれ本年度成果と関連付けて以下で述べる。 Awe感情の基礎的・現象学的な理解を目指して、昨年度までawe感情の感情価・覚醒度・さらにその文化差を検討する実験を行なっていたが、本年度はこれの追加実験を行った。具体的には、約20種類のawe感情の動画を参加者に呈示し、そこでの感情価・覚醒度・awe感情の関係とその文化差を検討した。その結果、awe感情は高覚醒ポジティブ、低覚醒ポジティブ、高覚醒ネガティブ感情のいずれとも正に関連し、日本では米国と比較して特に高覚醒ネガティブがaweとより関連していた。 昨年度までで地震や台風などの集合的脅威に対する反応として、つながりに対する価値が変化し、つながりに対する感動をしやすくなるのではないかという仮説を検討する研究を行ったが、本年度は論文の改稿を行い、国際誌への再投稿を行った。現在、査読を経て改稿中である。また、集合的脅威を実際にどの程度脅威として認知するかの文化差の研究の準備も引き続き行った。この研究は、温暖化・気候変動という地球規模での脅威やそれに伴ってローカルにおこる洪水などの脅威に地球規模で対処するための心理学的基盤を文化的多様性と普遍性の観点から検討する重要研究である。 Awe感情の結果を実験的に操作するための刺激画像作成を昨年度まで行なっていたが、本年度は時間感覚と自己についての感覚をawe感情が変化させるかの実験的検討を行った。その結果、指標によっては一貫しない結果ではあるものの、aweの体験は同じ時間の統制条件と比べて経過時間を長く見積もること、体験前と比べて自己が変容したと感じることが示された。
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