研究課題
ヒトが持つこころがどのように形成されるのかを考えるために、基礎的な知覚・高次の思考を含む様々な課題のパフォーマンス間の関係性を検討する。実験や研究の成果を一つのプラットフォームに集めるため、本研究で扱う課題とデータベースにする際に必要な情報を決定した。心理学で扱う課題には、刺激の呈示時間や呈示サイズなど、厳密な統制が必要となるために実験室で行うことが求められる課題(実験室実験)と、webなどを利用して比較的ラフな状況で大々的にデータ取得を行える課題(オンライン調査・実験)がある。本研究では、複数の種類の課題のパフォーマンスを重層的に検討するため、この2つの枠組みの両方を利用して研究を進めている。第1の枠組みである実験室実験では、研究代表者及び共同研究者が所属する拠点において、基礎的な心理実験を実施する。言語や環境の異なる世界各地の拠点において実験を進めるため、実験課題の実施プロシージャーや課題を共有するためのプラットフォームを構築した。この枠組みでは、視覚探索課題によって視覚認知機構の差異および対人認知課題によって対人認知の差異を検討しており、現在までに6ヶ国でデータを取得し、更に2ヶ国でデータ取得の準備を終えた。今後、課題の数や拠点の数を増やすことを試みる。第2の枠組みは「オンラインによるこころや幸福感に関する概念の調査」であり、オンラインに準備したプラットフォームにより「こころはどこにある?」「幸福/不幸の色は何色?」「幸せはいくらで買える?」などを調査し、「こころ」そのものに対する考え方の違いを明らかにする。この枠組みについては、オンラインでのプラットフォームの整備が終わり、調査ページを公開し、データの取得を行う段階に至ることができた。
2: おおむね順調に進展している
研究実施計画では、1年目にデータベースのための必要情報の決定や実験課題のプロシージャーの作成およびこれに基づいた少数のデータ取得を予定しており、1年目が終了した段階で、ほぼ実施計画に沿って遂行できている。2年目はこれらを利用して、より大規模なデータの収集を目指す。
当初の研究実施計画に従い、策定したプラットフォームに基づいて、より大規模なデータの収集によって、複数の課題や調査を踏まえた重層的な「こころワールドマップ」のプロトタイプを作成することを目指して研究を遂行する。令和元年度が終了した時点で、新型コロナウィルスの影響によって世界各地の共同研究拠点が封鎖等されており、実験室実験を遂行することが困難になっている。そのため、第2の枠組みを優先して取り組み、実験室実験についてはオンライン実験等に置き換えの可能性を含めて検討する。
他国でのデータ収集について、予定より謝金の支出や必要物品の購入等を抑えることができたため、残額となった。また、新型コロナウィルスの影響により、直接訪問してでの打ち合わせではなく、オンラインでの打ち合わせ等に変更したことによって予定よりも経費がかからなかった。次年度では、この残額を利用して、データ収集エージェント等を積極的に利用することにより、データの収集範囲を予定よりも広げることを検討する。
すべて 2019 その他
すべて 国際共同研究 (6件) 学会発表 (10件) (うち国際学会 10件、 招待講演 3件)