げっ歯類 (ラット) を対象として、躊躇行動としての食物新奇恐怖 (ネオフォビア) に関わる脳内メカニズムを解明することを目的とした。新奇味溶液 (0.5%サッカリン溶液) の摂取時におけるラットの躊躇行動を評価するため、摂取時の姿勢変化を測定する方法を確立するための実験を実施した。カメラ2台同期システムを用いて、実験装置内で味溶液を摂取するラットを撮影し、分析した。新奇味溶液を呈示した際に、呈示の初期には摂取時に伸展姿勢が見られたが、やがて身体を屈曲させながら摂取する行動が観察された。しかし、新奇味溶液を摂取時のラット体長を比較したところ、摂取溶液や摂取回数による違いは示されなかった。そこで、別のアプローチでラットの躊躇行動を評価する方法を検討した。ラットが溶液ボトルのノズル先端から5 cm手前に鼻先を近づけてからノズルを実際に舐めるまでの潜時を水呈示時と新奇味溶液 (0.5%サッカリン溶液) 呈示時で比較した。20分間の溶液呈示中での接近回数は新奇味溶液呈示時に増加する一方、潜時は長くなる傾向が示された。この行動傾向が躊躇行動を反映するかどうかについてはさらなる検討が必要であるものの、新奇味溶液呈示時のラット行動変化の一端を明らかになった。現在、新奇味溶液呈示後に内蔵不快感を誘発させる処置 (塩化リチウム投与) によって味溶液への嫌悪を条件づけた場合での傾向と比較することで新奇恐怖反応に特有の行動傾向かどうかを検討している段階である。
|