研究課題/領域番号 |
19K14475
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研究機関 | 駿河台大学 |
研究代表者 |
村越 琢磨 駿河台大学, 心理学部, 准教授 (70624724)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 表象形成過程 / 視覚運動協応 / 記憶表象 |
研究実績の概要 |
2020年度は,境界拡張事態を用いて能動的な視覚運動協応課題における視覚表象の形成メカニズムについて,視覚課題の結果との比較検討を行った。その結果,運動条件と視覚条件の両条件において,背景画像に情景を用いた場合に境界拡張が生じ,さらに画像がワイドアングルになるに従い知覚される画像の境界が拡張されることが示された。ただし,運動条件では視覚条件に比べて全体的に知覚される面積が小さく,視覚運動協応事態下では視知覚事態とは異なる表象形成過程を経ていることも示唆された。これらの結果をまとめると,境界拡張の生起は初期段階で視覚系と運動系の異なる経路で形成された表象に対して,その後に共通の表象の境界策定メカニズムの働きにより生じる現象であることと推察された。今後は視覚系と運動系の異なる経路で用いられる座標系の差異について,どのようなメカニズムの働きにより視覚運動協応事態の表象が修正されるのかについて検討を行う必要がある。 また,視覚運動協応事態と視知覚事態の違いとして,実験参加者の能動性の関与についても考察し,認知バイアスと意思決定が,記憶表象や触知覚への判断に与える影響も検討した。 2020年度の研究実施内容としては,新型コロナ感染症拡大の影響が大きく,実験室に実験参加者を招き入れての対面での実験実施が困難であったことが研究実施の障害となった。しかしながら,限られた条件下において,十全とはいかないまでも可能な範囲において研究計画に則り進捗したと考えられる。また,2020年度は,感染症予防対策を講じた実験室および実験環境の整備を行い,2021年度の実験実施への体制づくりを行った。今後の感染症拡大状況により不透明な部分も残るが,この実験環境を利用して2021年度研究計画の残りの部分について着実な実施体制が整えられたものと考える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2020年度は新型コロナ感染症拡大の影響により,大学への入校が制限され,研究活動についてもサーバーや実験動物の管理といった研究環境の維持以外は活動制限が課せられることとなった。これにより実験参加者を実験室に呼び込んでの対面での実験実施などを行えない状況が続いた。このような状況下で今年度の前半は実験プログラムの開発および分析法の検討などを行っていたが,年度の後半になり一部入校制限が解除され,研究活動の再開も条件付きながら認められた。これらに際し,感染症予防対策を講じた実験環境を整備し,ある程度の研究実施体制を整えることができた。その結果,予定されていた研究計画の一部履行が達成され,発展的な研究についても派生的に実施することができた。しかしながら,年度の前半部分に予定していた実験については十分に実施できたとは言えず,進捗状況としてはやや遅れているとの判断を行った。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度についても感染症拡大の効果は続いており,以前と同様の研究環境が用意されているとは言い難い状況であるが,2020年度までに講じた研究環境の整備により,これまでに比べて研究は進捗するものと考えられる。特に新型コロナウィルスに対するワクチン接種が進めば,本研究の主な実験参加者である若年層についても社会活動が再開され,対面での実験室実験への参加が見込まれる。その際には,準備しておいた対面実験を精力的に実施し,さらなるデータ取得に努めたい。 また,2021年度の前半部分については,実験参加者の安全に配慮しつつ可能な限り実験実施を行う予定であるが,それと同時にこれまで得られたデータの分析および投稿論文の執筆に研究時間をあてていく。さらに,若年層へのワクチン接種完了後の実験実施に向けて,実験プログラムの改良やさらなる実験室整備を行う予定である。 研究成果の発表については,海外学会,国内学会ともに対面での学会開催は未だ難しい面があり,開催が期待できない状況である。そのため,オンラインで開催される学会での研究発表を精力的に行い,それらの成果を学術雑誌に投稿することで広く研究成果を社会に還元する。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナ感染症拡大により,海外学会および国内学会へ参加できなかったため,それらの旅費を執行しなかった。さらに,実験室に実験参加者を招き入れての実験が実施できなかったため,それらの費用が翌年度に繰り越された。2021年度は実験室が使用可能となる予定であるため,実験室に設置予定の実験機器を繰り越された費用により購入する予定である。また,対面実験のための実験参加者謝礼と感染予防対策備品の購入に予算を使用する予定である。加えて,対面実験が不可能な状況になった場合には,オンラインでの研究実施のための機器購入に予算を使用することも考えている。
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