研究課題/領域番号 |
19K14475
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研究機関 | 駿河台大学 |
研究代表者 |
村越 琢磨 駿河台大学, 心理学部, 准教授 (70624724)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 表象形成過程 / 視覚運動協応 |
研究実績の概要 |
本年度は,本来であれば研究の最終年度であった。当初の研究計画では,ヘッドマウンドディスプレイを装着し,タッチパネルモニタより反応取得を行う実験を実施する予定であった。しかしながら,昨年度から引き続く,感染症拡大予防措置のため,大学キャンパス内の実験室へ実験参加者を呼び込み,対面で実験実施することが制約されていたため,データ取得のための実験を行うことができなかった。特に,ヘッドマウンドディスプレイを複数の実験参加者が装着し,顎台に頭部を固定しながらタッチパネルへリーチングを行うという実験内容は,感染症拡大予防の観点から実施が難しく,実験装置および手続きの変更が必要と考えられた。そこで,本年度は実験装置の改良および,これまで取得したデータの再分析を行った。装置としては,新たに換気装置つき簡易暗室を設置し,実験参加者と実験者が別のパーティション内でマスクを外して実験実施を可能とした。また,実験のインストラクションなどについても,実験者が簡易暗室内に入らずに,オンライン上の離れた場所から実験の指示,実施ができるように装置を改修した。データの再分析としては各apertureサイズ条件での錯視量の変動要因を再検討した。その結果,錯視量を変動させる要因として,画面中央への反応位置へのバイアスが認められることが示された。しかしながら,ワイドアングル画像を用いた条件において,境界が縮小される傾向については別の要因が関与していると考察され,これについてはさらなる実験が必要と考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
感染症拡大予防のため,大学への入校制限や実験実施への制約などが生じたため,計画通りの実験実施を行うことができず,十分なデータが取得できなかった。そのため,本年度は実験手続きと装置の見直しを行い,装置の改修を行った。これらの実験計画の変更に伴い実験実施スケジュールも変更となり,当初計画していたスケジュール通りの研究実施が叶わなかった。そのため,本年度は,感染症拡大予防措置下の状況においても実験実施が可能となるように,実験手続きの変更および実験装置の改修を行い,次年度の研究計画遂行の準備をと整えた。これに伴い,海外学会への出張旅費や実験参加者への謝礼についても執行しなかった。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度は,感染症拡大予防措置の影響により,計画通りのデータ測定が十分にできない状況であった。そのため,本年度は実験装置の改修を行い,実験参加者と実験者が極力接触しないで実験が実施できるよう整備を行った。そこで2022年度は改修した装置を用い,2021年度に実施予定であった実験を実施する。実施時期としては7月および9月を予定しており,実験参加者は各実験12名ずつを予定している。仮に,大学構内への入構制限がさらに強化され,実験参加者の呼び込みが一切できない状況となった場合には,タッチパネルによる反応取得を行い実験課題に変更し,オンライン上でデータ測定を行う予定である。具体的には,比較刺激として撮影距離の異なる複数枚の画像を呈示し,標準刺激を知覚した際の内容に最も近い画像を選択させる。この手続きによって,撮影距離が近い画像が選ばれた場合には境界縮小,撮影距離が遠い画像が選ばれた場合には境界拡張方向への錯視が生じたことが示される。また,データの再分析から反応時のバイアス傾向が認められたことから,反応バイアスについても検討する必要性が考えられた。反応バイアスについては錯視による従属変数の変動とは独立に効果を確かめるため,境界拡張現象とは別の意思決定課題を用いて認知バイアスの効果を測定する予定である。さらに,ここまで得られたデータについては,残っている分析を完了し,その内容を投稿論文として纏める予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
感染症拡大予防措置のため研究計画の変更が生じたため,海外学会参加費や実験参加者への謝礼金も変更された。そのため,翌年度の予算として実験参加者の謝礼金等を使用予定とした。
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