最終年度はこれまでの研究内容をとりまとめる予定であった。しかしながら,新型コロナウイルスへの感染拡大が懸念される状況下では,当初計画していた課題を実施することが困難であり,オンラインによる実験や研究計画の実施において新たに着想を得た実験を実施し,それらを国内外の学会にて発表を行った。 具体的には自殺の対人関係理論の観点から,社交不安傾向の高さが集団内での対人相互作用場面における負担感の知覚や所属感の減弱に与える効果について検討した。その結果,社交不安が高い人は,対人相互作用場面において自分自身のパフォーマンスが所属する集団のパフォーマンスを低下させる状況において,負担感の知覚や所属感の減弱を感じやすい傾向があることが示唆された。本研究は,実験的な手続きを用いて負担感の知覚や所属感の減弱を操作することに成功した国内では初めての研究であり,日本心理学会第87回大会にてその成果を発表している 他者の視線などは社交不安をもつ人にとって脅威となる社会的な刺激であり,他の社会的な刺激とは異なる注意特性を生じさせる。社交不安に特有な注意特性を検討するための基礎的な研究として,ヒト以外のさまざまな視線刺激を用ることで異なる視線刺激によって引き起こされる注意特性を検討した。これらの研究成果は電子情報通信学会,Psychonomic societyにて発表を行い,国内外の研究者と活発な議論を行うことができた。さらにこれらの研究成果は,国際的な学術雑誌に投稿し現在は一度目の改稿を経て,再投稿を行う予定である。本研究に対する査読者の評価はポジティブなものであり,論文として採択される可能性が高いと考えている。
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