研究実績の概要 |
本研究の目的は,身体行為・状態と感情認知の関連性について検討することである。令和元年度は,行為主体感や身体状態,周辺環境が感情評価に与える影響に関する研究に従事した。さらに,嫌悪対象への身体忌避反応についても明らかにした。 行為主体感を扱った研究では,行為と結果(ボタン押しと画像表示)の時間的ラグを設けることで主体感を操作し,それにともない画像への感情評価がどのように変容するかを検討した。結果として,ラグの長さの影響については顕著な効果が見られなかった。主体感の操作にともなう感情評価の変容については,引き続き検討が必要である。 身体状態に関する研究では,表情フィードバックが他者の表情判断やバイオロジカルモーションの感情判断に影響を与えることが明らかになり,この影響が複数の文化圏で見られることを確認した(Marmolejo-Ramos, Murata, Sasaki, Yamada, Ikeda, Hinojosa, Watanabe, Parzuchowski, Tirado, & Ospina, 2020)。また,周辺環境の違いを扱った研究では,嫌悪対象への感情評価が居住地域の影響を受けることを示した (Zhu, Sasaki, Jiang, Qian, & Yamada, 2020)。 加えて,感情を換気する画像へ指で接触を求めると,嫌悪画像の場合では接触が遅延することを明らかにした。これは嫌悪対象への身体忌避反応が自動的に起こることを示唆している (天野・佐々木・石井・渡邊, 2020)。 他にも閾下馴化に関する事前審査付き事前登録研究も進めている。
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