研究課題
本研究は行為主体性や身体意識,自己意識が感情認知に及ぼす影響を検討するのが目的である。2020年度は,COVID-19状況下であったため,主にオンライン実験で研究を進めていった。-言語表現による自己意識操作と行動・態度変容:自己アイデンティティを強調するような指示は,不正行為を抑制する。このような指示がCOVID-19感染拡大状況下での人々の感染拡大防止にまつわる行動・意図にも影響を与えるのかを検討した。実験では「コロナウイルスを拡散しないでください」あるいは「コロナウイルスの拡散者にならないでください」と被験者に教示し,その後1週間の感染予防意図や感染予防行動に違いが見られるかを検討した。結果として,教示による効果は見られなかった。本研究の結果は,自己意識の調整による態度・行動変容が感染拡大防止の文脈では功を奏するわけではないことを示唆している。この成果はRoyal Society Open Science誌に掲載された。-感情の身体化:自身の身体の上下左右と感情の快不快は連合している (垂直方向: 上-快,下-不快; 水平方向: 利き手-快,非利き手-不快)。これらの連合にまつわる2種類の課題 (反応時間課題と非反応時間課題) で実験を行い,その効果の頑健性を検討した。実験の結果,垂直方向の連合はいずれの課題でも見られ,水平方向の連合が効果が見られなかった。ゆえに,垂直方向の連合の方が顕著であることが示唆された。この成果は,論文としてまとめられ,プレプリントとして公開中である。さらに現在,査読付き国際誌に投稿準備中である。他にも感情や態度に関する研究を行い,査読付き論文を5本掲載した。
3: やや遅れている
COVID-19感染拡大状況下で,実験室実験の実施が困難であったため,遅れが生じている。ただし,この状況を利用し,COVID-19にまつわる自己意識研究を実施することができ,社会という枠組みから自己意識と感情認知のプロセスを再度見直す契機とはなった。
オンラインで自己・身体意識と感情認知の研究を進める。実験室実験が実施可能になれば予定通り,行為・結果間の時間ラグや一貫性の操作を操作した実験を再度検証する。
COVID-19状況下で,出張がなく,旅費計上分が消費されなかったため。さらに,実験室実験が実施できず,被験者謝金が予定よりかからなかったため。
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すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (9件) (うち招待講演 8件) 図書 (1件)
Royal Society Open Science
巻: na ページ: na
Frontiers in Research Metrics and Analytics
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