研究課題/領域番号 |
19K14482
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研究機関 | 関西大学 |
研究代表者 |
佐々木 恭志郎 関西大学, 総合情報学部, 准教授 (70831600)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 感情 / 自己 / 身体性 / 所有感 |
研究実績の概要 |
本研究は行為主体性や身体意識,自己意識が感情認知に及ぼす影響を検討するのが目的である。2021年度もCOVID-19の状況下であったため,対面実験が困難であった。しかしながら,そのような状況下で可能な研究に切り替えて,身体性に基づいた感情・感性処理プロセスの一端を明らかにした。具体的には下記である。
-同じ顔の人物が同一空間に存在すると不気味さを喚起される「クローン減価効果」を発見した。この現象は,顔の形態特徴ではなくアイデンティティの重複がトリガーとなって生起している。また,動物性嫌悪の感受性の個人差との関連も見出した。これらを総合すると,アイデンティティの重複という非現実的な対象への回避反応が,クローン減価効果の根底にあることが明らかになった。これらの成果はPLOS ONEとBMC Research Notesに掲載された。 -心理的所有感の尺度を開発し,主観的なコントロール感が高いと心理的所有感が高くなることを明らかにした。我々は,自分の持ち物に対して所有感を抱くのだが,それがその対象に対する「制御できる」という主観的感覚がキーであることを示した。また,実際に所有していなくてもある対象に擬似的な所有感を抱くことがあるのだが,これが対象への接触イメージが肝であることを示した。このように所有という感覚の根底に身体性が重要な役割を担っていることが明らかになった。この成果はPeerJ誌に掲載された。
他にもメッセージングによる態度変容といった感情形成に関わる研究を行った。これらは,感情形成のメカニズムを総合的に理解する上では必要不可欠であり,本計画を大きく進展させた。これらの一連の研究成果を含めて,査読付き論文を計4本掲載した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
COVID-19の状況下であったため計画の変更が必要であったが,新たな視点から身体性と感情について捉えることができたため,結果的にはおおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
引き続きオンラインで,身体感覚と感情認知を支える潜在的・顕在的プロセスについて検証を重ねる。対面実験が実施しやすい状況になった場合には,感染症対策を十分にした上で適宜遂行していきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍であったため,予定した出張を実施することができなかった。また対面実験についても実施できず,計画をオンライン実験主体のものに変更した。これらが原因で想定より予算を消化しなかったため,次年度使用額が生じた。これらは,最終的なデータ解析に必要なデバイス・ツールの購入費,さらには補足実験の参加者謝礼,論文掲載費などに使用したいと考えている。
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