研究課題/領域番号 |
19K14483
|
研究機関 | 岐阜聖徳学園大学 |
研究代表者 |
蔵冨 恵 岐阜聖徳学園大学, 教育学部, 講師 (00782286)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
|
キーワード | 内発的動機づけ / 認知的制御 / 好奇心 / 接近動機づけ / 回避動機づけ / 認知的労力 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は,課題に対する内発的動機づけによって駆動する認知的制御メカニズムを明らかにすることである。内発的動機づけとは,知的好奇心のように,その行動そのものが楽しいからといった内発的に生じる課題に対する動機づけである。今年度の予定は,前年度に引き続き,(1)内発的動機づけを誘発するための刺激作成を用いた認知実験の実施と(2)研究成果のまとめであった。 (1)内発的動機づけを誘発する刺激を用いた認知実験では,前年度に収集されたトリビアクイズを用いて,干渉課題を実施した。具体的には,トリビアクイズを呈示後に干渉課題を行った。そして,干渉課題が正答かつ速い反応だったときに,トリビアクイズの解答を見ることができた。その際の認知的な競合に対する振る舞いを検討したところ,トリビアクイズの答えを知りたいときには,そうでないときに比べて,競合の解消が効率化した。さらに,これは課題文脈にかかわらずみられることから,知的好奇心は課題文脈に基づいて行われる調整である認知的制御を行うことなく,競合解消が効率化されることが示唆された。この結果は,日本心理学会で発表をし,優秀発表賞を受賞した。 一方で,ブラー画像によって誘発される知覚的好奇心を用いると,同様の結果が得られないことも確認された。この結果については,次年度発表予定である。 (2)研究成果のまとめについては,好奇心でも知的好奇心と知覚的好奇心とでは,認知的制御に及ぼす影響が異なることが見出された。知的好奇心は,知識を得たいとする好奇心であるのに対して,知覚的好奇心では,何かわからないといった不快感情から生じると考えられている。そのため,好奇心の誘発のさせ方が認知的制御への調整に影響を及ぼすことが考えられる。この点については,頑健な知見が得られているわけではないため,実験を積み重ねることにより,次年度学術論文として,執筆,投稿する予定である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナウイルス感染防止の観点から,対面での実験が困難となった。そのため,予定通りのデータを収集することができず,計画が遅れてしまった。一方,感染対策も確立され,徐々にではあるが対面での実験も実施出来るようになってきたため,引き続きデータを収集していく予定である。
|
今後の研究の推進方策 |
好奇心の誘発の方法(知的好奇心か知覚的好奇心か)によって,認知的制御が異なる影響を受けることが明らかになりつつある。そのため,今後,知識のためといったポジティブなものへ接近する知的好奇心と,不快なものを解消するといったネガティブを回避する知覚的好奇心に大別し,内発的動機づけによって駆動する認知的制御メカニズムを明らかにする。この差異は,金銭的報酬でも同様のことが言え,金銭を得るための動機づけである接近動機づけと,金銭を失わないような動機づけである回避動機づけと整合性があるかもしれない。そこで,好奇心に接近・回避動機づけの視点を取り入れた検討を行っていく。
|
次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルスの影響により国際学会への参加が困難になったり,国内学会もオンライン開催となったりしただけではなく,対面による実験が困難であったことから,旅費や謝金が当初の予定よりも発生しなかった。しかし,次年度では対面による実験もコロナ禍前に近い状態で行うことができるようになったため,これまでの遅れを取り戻すため,実験データを迅速に収集する予定である。そのため,実験に伴う実験者および被験者の謝金が必要となる。さらに,実験データを効率的に収集するために実験環境の整備も必要となる。これらのことから,次年度は実験環境整備および実験に伴う謝金に使用する予定である。
|