研究課題/領域番号 |
19K14484
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研究機関 | 愛知文教大学 |
研究代表者 |
黒田 敏数 愛知文教大学, 人文学部, 講師 (80712968)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | ゼブラフィッシュ / 社会的行動 / コンピュータビジョン / 人工知能 |
研究実績の概要 |
ゼブラフィッシュは遺伝子組換えが容易であることに加え、比較的高い学習能力を持つことから、生命科学と行動科学の橋渡しとなることが期待されている魚類である。集団で泳ぐ社会性もあり、これにも学習が関わっていると考えられる。先行研究ではゼブラフィッシュの3Dモーションをリアルタイムで追跡し、特定の場所に接近することを条件に餌を提示すること(オペラント条件づけ)で、この接近行動の学習を確認できた。本研究では複数の個体を追跡し、互いへの接近行動を条件に餌を提示することで、この標的行動が増加するかの実験的検討を当初計画していた。 前年度までに複数の個体をリアルタイムで追跡するシステムを構築し、2匹のペアを対象とした実験を行ったところ、一部のペアでは学習が起きたものの、別のペアでは学習が確認できなかった。餌提示の条件となる接近距離や、接近している時間の長さなど、ペアによって適切なパラメータが異なるようである。またリアルタイムでの個体識別の精度は高いものの、100%にはできない技術的課題も残った。 こういった研究成果から、当初の研究計画を修正し、実験対象ではない別の個体(他個体)をモニターに映すシステムを構築した。ゼブラフィッシュの画像から作製した3Dアニメーションで、モニター上の位置や動き、角度をリアルタイムで操作できる。この新しいシステムを用いて動かない個体、実験対象を追いかける個体、追いかけられる個体、ランダムに動く個体など、様々な動きのパターンへの選好を調査したところ、安定したデータが得られた。実験対象の動きをベースに他個体の動きをリアルタイムで変えられることは、社会行動の分析において非常に大きなメリットである。今後はこのシステムを土台とした研究を継続予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
上記のように研究計画を修正したため、計画はやや遅れているという判断だが、社会行動の分析という視野からは新しい糸口をみつけることができた。
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今後の研究の推進方策 |
上記の、実験対象ではない別の個体をモニターに映す新しいシステムを活用し、モニターに映す個体の数、動きの速さやパターンなどを操作し、それに対する選好の調査を予定している。将来的には、これらの社会刺激を用いたオペラント条件づけに取り組み、ゼブラフィッシュの社会行動における学習プロセスの役割を明らかにしたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
前年度までの残額を失念していた。2022年度の物品費に充てることを計画している。
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