研究課題/領域番号 |
19K14487
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研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
望月 圭 近畿大学, 医学部, 助教 (50779931)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 神経科学 |
研究実績の概要 |
自分で身体を動かしたとき「その運動を自分の意思で行なった」という感覚が生じる。これを運動主体感という。このあたりまえの知覚の成立には、自身の運動出力と身体状態の感覚フィードバックの高度な比較が必要であり、その神経メカニズムは未だ明らかになっていない。これは、運動主体感の定量がヒト以外の動物では難しく、動物実験による神経メカニズムの検討ができないという根本的問題によっている。そこで本研究は、動物実験において運動主体感を定量する行動課題を開発するとともに、実際の動物実験を通して、運動主体感の生起と異常のメカニズムを解明することを目的とした。 2019年度、本研究では、前年度より行動訓練を行なっていた1頭目の個体についての訓練を完了し、基本的な課題シーケンスの遂行に関しては安定したパフォーマンスを得ることができた。そこで、以降は定期的に課題パラメータの変更と行動データ収集を繰り返し、自己の運動が時間間隔の知覚に与える影響を定量しやすいような課題パラメータを探索した。データ解析においては、複数の計算論的モデルを動物の選択系列にあてはめることにより、時間間隔に関して動物が内的に行なっている判断の過程を明らかにした。また当初の計画どおり、神経伝達を阻害する薬品を低容量投与し、それにより、個体の行なう時間間隔に関する判断がどのような影響を受けるかを検討した。これらの実験から、実験動物において運動主体感のレベルを客観的な指標によって計測する方法を確立した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本年度は、認められた予算の都合上すべての必要機器を揃えることが困難であった。そこで交付申請書の研究実施計画において記載したとおり、本年度は行動課題の完成と行動薬理実験の遂行を優先して行なうこととした。その結果、基本的な課題構成については早期に十分なパフォーマンスが得られ、残りの期間を適切な課題パラメータの探索に充てることができた。また行動薬理実験に関しても当初の計画に則って着手し、現在解析に足るデータが収集できつつある。これらの結果を踏まえ、当研究は現在まで順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
今後も当初の研究計画にしたがって研究を遂行する。ただし、本報告書作成時点において、新型コロナウイルス感染症の拡大の影響を受け、今後の研究進展について大幅な遅れが出ることが予想されている。当教室では、万一の新型コロナウイルス感染者の発生時に実験動物の安全を確保するため、現時点で、実験動物飼育区画の分割と担当実験者の班分け、実験の縮小、実験時間の分割による感染拡大リスクの低減などの施策を実施している。このため今後、当初の予定どおりにはデータ収集が進行しない可能性が高い。とくに2個体目の行動訓練については、飼育区画の分割の都合上、開始の目処が立っていない。当初の研究計画の遵守が困難になった場合、本研究では、1個体目のデータ収集の完了と、2個体目における行動訓練・行動データ収集・行動薬理実験の進行を優先することとし、これらの研究内容について必要な2個体分のデータを集めることを最優先事項とする。
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次年度使用額が生じた理由 |
課題申請時の希望額に比して実際に内定された予算額が少なかったため、本年度だけでは必要な機材を揃えることができず、次年度予算と合わせて高額機器の購入に充てるため本年度は予算全額を使い切らなかった。
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